トランプ政権が発足前に直面している「難題」 問題含みの閣僚を全員就任させられるか

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上院議員のジョン・マケイン氏とリンゼー・グラム氏は、米国の地政学上の敵としてのロシアの復活を深く懸念している上院議員グループを非公式に率いており、対ロシア政策を綿密に練っている。

上院多数党院内総務のミッチ・マコーネル氏が率いる共和党上院議員のイデオロギー的グループは、共和党内でのトランプ氏の躍進と、党を率いる能力に不満を抱いている。マコーネル氏らは共和党の政策を、自由貿易も含めてもっと過去の共和党の政策に沿った方向に戻したがっている。それを成し遂げるにはまず、トランプ氏とCIAとの関係を「修復」し、彼のロシアに対する考え方や米露関係について考え方を改めてもらうように仕向けなければならない。

一方、民主党もトランプ氏のロシアに対する「執着」に不安を膨らませており、米露の不健全な関係は、米企業のロシアにおける活動や米国の安全保障に悪影響を与えかねないと考えている。こうした理由からやはり、トランプ氏の政治的な活動を抑えたいと考えている。

問題だらけのツイッター投稿

これら3つの派閥はすべて、上記の通り異なる理由から、トランプ氏の攻撃からCIAを守る立場に立っている。

 とりわけ、フリン氏を国家安全保障担当補佐官にするというトランプ氏の決定は、CIAなどの情報機関がトランプ氏に反発の姿勢を示す最大の原因となっている。国防情報局(DIA)局長を務めた経験のあるフリン氏だけに、情報機関高官としてのスキルについては高い評価があることは確かだ。だが、彼は一部の過激派だけでなくイスラム教徒全体を米国の敵とみなす傾向が強くなったことで、DIAを追われている。彼は陰謀論にも陥りやすいのである。

フリン氏はまた、大統領選挙期間中に、クリントン氏に関する偽造の告発やニュースを定期的にツイッターに投稿していたことも明らかになっている。フリン氏は、クリントン氏がマネーロンダリングや子どもへの性犯罪に関与していた証拠があるとツイートしたこともある。退役軍人将校で、軍事アナリストのバリー・マキャフリー氏は最近、こうした投稿した内容を「ほとんど狂っている」として、調査を要求した。

数々の疑惑や問題を抱えながら、大統領に就任するトランプ氏。新たな政権が落ち着いて、政策に取り組めるようになるには時間を要しそうだ。
 

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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