一生モノの高級ダウン「モンクレール」の正体 衣料不況の中、右肩上がりの成長が続く

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日本での直営店展開は8年前に遡る。2009年に高級ブランドを手掛ける輸入商社・八木通商との合弁会社「モンクレール ジャパン」を設立。それまではセレクトショップなどへの卸売りが中心だったが、合弁設立をきっかけに直営店の出店を本格化させた。現在は青山や銀座の旗艦店だけではなく、百貨店を中心に全国27店舗で展開する。そのうちのおよそ半数の12店が東京都内の店舗だ。「特に東京地域でのブランド認知は進んでいる。既存の店舗ネットワークを改善しさらに認知を高めたい」(ルッフィーニ会長)。

モンクレールは高収益企業でもある。2015年1月~12月の同社の業績は、売上高が約8億8040万ユーロ(約1057億円、前年同期比26%増)、EBITDA(税引き前利益に利払い費、償却費を足したもの)は約3億ユーロ(約360億円、同28.8%増)だった。成長著しいアジア地域だけでなく、全世界で直営店による店舗ネットワークの拡大を進めている。

特筆すべきは2012年に69.7%だった粗利益率が74.4%まで向上していることだ。粗利益率は売上高から原料や製造委託費など直接原価を引いたもの。アパレル企業の粗利益率は40~60%が一般的で、70%を超えるのは異例だ。粗利益率の高さは、それだけ商品の付加価値を消費者が認めている証でもある。

直営店比率が約7割に拡大

日本での旗艦1号店である青山店。日本でも高級ブランドとして定着しつつある(記者撮影)

粗利益率の向上と平行して、高まっているのが直営店比率だ。2015年には直営店での売り上げ比率が約7割に達した。一般的に卸売りだけでなく販売まで手がけたほうが、リスクは高まるが利益率は改善する。自ら直営店を運営すればブランドイメージをコントロールしやすいというメリットもある。直営店戦略はモンクレールを高級ブランドとして押し上げた一つの要因といえそうだ。

ルッフィーニ会長は「私たちは決して財務データをみてビジネスの意思決定をしていない。適切な価格体系はあらゆる高級ブランドにとって重要だ」と述べる。クリエイターである同氏が長く経営の中枢にいることが、ブレのない戦略の最大の要因といえるかもしれない。需要拡大の進む日本、アジア地域でさらに新規客を取り込めるかどうか。ルッフィーニ会長の手腕に掛かっている。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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