キャンドゥが「インスタ映え」にこだわる理由 おしゃれな投稿写真で、来店客が増加中

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現在は園中氏など、バイヤーを主業務とする社員5人が、写真の撮影から投稿まですべて行っている。投稿は営業日ごとに1日1回行うのが基本だ。写真SNSだけあって、手を掛けているのが商品写真の撮影。毎週月曜日を撮影日として、1週間分の商品を約半日掛けて撮影する。おもに社内の会議室で、iPhoneなど普通のスマートフォンのインスタグラムアプリを使う。

どうすればベストなショットがとれるのか。1週間分の商品を約半日掛けて撮影している。右が園中杏実氏、左が奥珠美氏(記者撮影)

撮影時は木目調のパネルなど、撮影用の小物を会議室のテーブルに敷くなど工夫を凝らす。スタッフ同士で、あれこれ話し合いながら、大量の写真を撮影、「インスタ映え」するベストな一枚を狙うのだ。

もっとも、撮影に手を掛けるとはいっても、専門的な撮影機材や、画像加工ソフトなどは一切使わない。同じくインスタグラムを担当する奥珠美・商品部商品課バイヤーは、「商品の魅力をよりよく紹介するには、調達・開発しているバイヤー自らが撮影するのが一番いい」と言う。望月部長は「バイヤーのこだわり、熱意を大切にしたい」と語る。

今後は商品開発につながる面も?

インスタグラムに投稿する商品は、基本的に新商品で、カテゴリーに縛りはない。ただ、「おしゃれなもの」というコンセプトは貫いている。また、新商品でなくても、「おしゃれ」を演出できそうな商品であれば、改めて紹介する。埋もれた有望商品を探しに店頭での探索も定期的に行っているという。

投稿に当たって注意しているのは、店舗との連動だ。投稿する商品を決めたら事前に店舗に予定を連絡、在庫の手当をする仕組みを整えている。インスタグラムを見た顧客は投稿された商品を目当てに来店する。商品が店頭になければ、販売機会ロスのみならず、顧客満足度の低下を招くからだ。当初、こうした仕組みが整っておらず、不満の書き込みや、店舗側からのクレームが多く発生した。

現時点でも、インスタグラムの書き込みのうち、比較的多い不満事項は、「店に商品がなかった」というもの。潤沢に在庫を持てばこうした不満はなくなるが、売れ残れば損失となる。望月部長も「適正な在庫管理とプロモーションの連動は難しい課題」と認識する。ただ、在庫管理を優先するとコンテンツとしての魅力が低下するため、基本は今までどおり、担当者の感性に任せる考えだ。

成果を上げたキャンドゥのインスタグラムだが、当面は、さらにフォロワー数、閲覧数を増やして、商品の販売を拡大させることが目標だ。将来的には商品の企画・開発への応用も目指している。商品のアピールだけでなく顧客のニーズも取り込む、重要なツールといえそうだ。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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