ポルシェ「718」の4気筒ターボは何がスゴいか 新型ケイマンとボクスターが追求する走り

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パワーの数値をみても、新世代の4気筒のほうが6気筒より上がっている。6気筒時代の2.7リッターモデルは(ケイマンでみると)最高出力202kW(275ps)、最大トルク290Nmだった。それが2リッター4気筒ターボに移行して220kW(300ps)、380Nmとなっている。3.4リッター6気筒のSモデルは239kW(325ps)と370Nmだったものが、新世代の718 ケイマン Sの2.5リッター4気筒ターボでは257kW(350ps)と420Nmと大幅な向上だ(6気筒時代はボクスターとケイマンと数値が違っていたが718になって同一に)。

操縦しても体感的にひとクラス上の動力性能を得たような感じすらある。

利き腕を使って繊細なシフトを楽しみたい

718と呼ばれるようになったポルシェのミドシップスポーツ・シリーズ。新しい4気筒エンジンを得て走りはよくなったのか、それとも楽しくなくなったのか。その質問に対する答えは走り出してすぐに得られる。ひとことで言って、じつに楽しいのだ。よさはまったく減じていない。

自動車界には“排気量に勝るものなし”という言説がある。米国の自動車会社がかつて好んで使ったフレーズだ。ナチュラルな感覚でたっぷりしたトルクによる力強い走りを楽しむなら、大排気量にするのが一番の方法だという。その伝でいうと、2.9リッターから2リッターになった718シリーズには懸念が残るかもしれない。

実際にボクスターに乗ったところ、しかし、発進も加速もなんの問題もない。最大トルクが1950rpmから出はじめる設定ということもあり、意外なほど力強く発進し、エンジン回転が2500rpmを超えるあたりからの加速はじつに気持ちがいい。これが2リッター4気筒?と驚くほどだ。ごく低回転域からいっきに吹け上がっていくとき、ターボチャージャーは一瞬のよどみもない。可変ジオメトリーを採用したターボの制御も見事。第一級のターボエンジンのすばらしい見本である。

ボクスターは軽快。ここではサーキット走行がメインだったためソフトトップは上げているけれど、このクルマのドライブを堪能しようと思ったら幌を開けてサイドウィンドウも下げてトップを軽くして、本来のスポーツカーのスタイルで走るのが楽しいだろう。カッコもいい。室内に荷物が置けないのは、純粋なスポーツカーを追求するポルシェのこだわりだと理解して乗るのが一番だ。

エンジン音もけっして悪くないし、楽しめる要素は満載だ。6段マニュアル車(619万円)はエンジンのキャラクターをしっかり味わえるし、シフトのフィールもよい。僕は日本には右ハンドルが合っていると思っているけれど、このクルマだけは利き腕を使って繊細なシフトを楽しみたい。その価値があるからだ。718シリーズのマニュアル変速機については少なくとも、右効きだったら左ハンドルがベストだ。

次ページ日本に上陸したばかりの718 ケイマンS
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