「所沢と多摩」で30代が急減した深刻な事情 23区は転出人口減で「港区出身」の子が増加中

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住宅地が並ぶ埼玉県・所沢市だが、就職や結婚をする世代の人口減少が激しい(撮影:筆者)

大学卒業、結婚などを機に市外、おそらくより都心に近い地域に出て行くからだろう。夫婦共働きが増えると、都心志向が強まるのである。

そして、転出や死亡によるものと思われる、65歳以上の人口減少が非常に大きいのも、所沢市の特徴だ。こうして所沢市では、2010年から2015年にかけて全体で1538人の人口減少を見たのである。

また、多摩ニュータウンのある東京都多摩市は、28歳から37歳の減少が激しい。ただし60代以上の減少は少ない。団塊世代など、最初にニュータウンに住んだ世代は、そこに定着しているのだが、その子どもの世代が出て行ってしまうのである。

すなわち、本来ニュータウンは30代の子育て世帯が多い地域だったはずだが、現在は逆に、子育て世代が少ない街となっているのだ。

東京・多摩市の多摩ニュータウン。人口減少が著しい郊外が生き残るための策とは?(撮影:筆者)

ただし40代はあまり減っておらず、10代も増えているので、30代の時点で多摩市にいた(あるいは子どもの頃からずっといた)団塊ジュニアは、一定の定着を見せていると言えるようだ。私の知人にも、ちょうどそういう人がいる。

こうした状況を受けて、近年郊外の人口減少、高齢化、空き家の増加が問題になっている。それらの問題を解決するための対策はなかなか難しいが、私は、大きなコンセプトとして、郊外を都心に通勤する人々の家庭が住むベッドタウンとして規定するのをやめ、1つの独自の街として「都市化」することが重要だと考えている。

郊外に「働く機能」を追加する

現在、企業の中ではようやく在宅勤務を本格化していこうという動きが広がってきた。リクルート、トヨタなどの大企業も在宅勤務に乗り出している。毎日通勤するには遠すぎるが、基本的には在宅勤務をして、週に何日か都心に通勤する上では環境がよいという地域もあるから、そうした地域は在宅勤務の適地として訴求し、新たな人口を引き込んだ方がいい。 

郊外に「働く」機能を付加し、そこから付随して、休む、出会う、交流する、発想する、考える、創造する、といった機能を持った都市へと発展させていく。こうして、もはや単なる郊外ではないという状態に持って行く必要があるのだ。

三浦 展 社会デザイン研究者

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みうら あつし / Atsushi Miura

カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年に一橋大学社会学部卒。パルコに入社し、マーケティング誌『アクロス』編集室。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、『第四の消費』『日本人はこれから何を買うのか?』『東京は郊外から消えていく!』『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代』『あなたにいちばん似合う街』など多数。

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