残念なリーダーは「傲慢」で他人を頼れない

項羽と劉邦はどこで明暗が分かれたのか

リーダーには自分よりも優れた他人の力を用いる器量が求められます(写真:Graphs / PIXTA)

ひとりの人間ができることには限界がある。

店舗を経営するにしても、経営者の目が十分に届くのは、せいぜい3店舗まで。もし30~50店と多店舗展開をしようと思えば、他人の力を借りなければならない。古来、一国を築いた英雄であっても、たったひとりでその偉業を成し遂げたのは、神話時代の創造神を除けば、人類の中ではどこを探してもひとりもいない。

私は経営者時代を含むビジネス人生で、終始一貫、チームの力を最大限発揮させる方法について追究してきた。拙著『他人力のリーダーシップ論』でも詳しく述べているが、「他人力」が使えなければ、大きな仕事はできない。

「他人力」とは?

他人力とは耳慣れない言葉かもしれないが、自分以外の他人が持つ力を認め、その力を生かすことだ。部下に力を発揮させることも、上司の力を借りることも他人力と私は定義している。戦うのは兵隊、作戦を立てるのは、昔なら軍師、近代戦では参謀である。将軍の仕事は、これらの人々の力を最大に発揮させることにある。どんなに強い将軍であっても、戦場で戦うのは将軍ではない。戦いの規模が大きくなればなるほど、将軍に求められるのは用兵の技術、兵を動かす力である。

他人力はいくつもの切り口で論じられるが、それをうまく使えない人が陥りがちなのが「傲慢」だ。それは古くから変わらない残念なリーダーが持つ性質の1つでもある。三国志や項羽と劉邦による楚漢の戦いなど、中国の歴史の中に現代のビジネス社会にも通じるヒントがある。

私は、経営者には自信がなければいけないが、過信、慢心に陥ることの危険もよく知っておくべきであるし、最悪なのは過信、慢心が高じて傲慢になることだとつねに戒めている。

傲慢の弊害は、第一に人の話に耳を傾けなくなることである。秦の始皇帝亡き後、再び中国に統一王朝を築いた漢の劉邦は、流れの遊説者の話にも真摯に聴き入ったといわれる。相手の話に積極的に耳を傾けることは、相手を深く尊重(リスペクト)しているという態度の表明である。人は自分を尊重してくれる人を尊重する。最重要の基本動作といえる。

劉邦は、家柄もよいわけではなく無学の人であった。本人もそれを自覚し、それゆえ人の話をよく聴いたし、また献策があればよくこれを受け入れた。

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