ジム・ロジャーズ氏「日本株も円も買わない」 カリスマ投資家が今でも日本に悲観的なワケ

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――トランプ政権下では移民が厳しく制限されそうです。米国経済への影響は?

経済成長のエンジンはオープン・エコノミーだ。私が住むシンガポールは1960年代、アジアで最も貧しい国の一つだったが、開放政策を取ったことで今の豊かさを手に入れた。米国も同じだ。移民を受け入れることで経済成長を実現してきた。扉を閉ざせば経済は停滞するだろう。

――日本も移民を受け入れるべきでしょうか。

私は日本が大好きだ。もし日本が財政破綻したら、私はどこで、美味しいお寿司を食べれば良いのだろうか、と考えてしまう。ただし、日本の破綻はすでに始まっているとも言える。人口減少が始まり、負債はまるでロケットのように増え続けている。日本の平均株価は2016年の時点で25年前より安い。実は、こんな国は他にはない。それによって人口が突然増えるものではないが、移民を受け入れるべきだろう。日本の人は嫌がるかもしれないが。

「若くて頭のいい人達は、やがて日本を去る」

――以前、ロジャーズさんは「日本株を全部、売る」と言っていました。トランプ氏が大統領選に勝った後、日本株は上昇に転じているが投資するつもりはありませんか。

今は日本株をインデックスで保有しているが、それだけだ。現在、円は持っていない。歴史を振り返れば昔日の経済大国が最貧国になったケースはいくつもある。日本の状況は良くない。若くて頭のいい人達は、やがてこの国を去るのではないかと思う。

「今は日本株をインデックスで保有しているが、それだけだ。現在、円は持っていない」

――ところで、米国は本当にTPPから離脱するでしょうか。

トランプ氏があれだけはっきり言っているのだから、アメリカはTPPから抜けるのだろう。それはアメリカ経済にとって悪いニュースだ。しかし、アジアにおけるアメリカの存在感が薄れることは、アジアの国々にとっては良いことかもしれない。中国の存在感が高まり、中国とロシアが接近することによって伸びる産業もあるだろう。

――OPEC(石油輸出国機構)が原油の減産で合意しました。原油価格は持ち直しますか。

過去50年、OPECの減産で価格が上がったこともあれば、下がったこともある。産油国は嘘をつくしズルもするので、今回の減産合意が実効性を持つかどうかは今後をよく見ていかないとわからない。ファンダメンタルズを見れば供給は着実に減っているため、需給が逼迫に向かうのは間違いない。しかし、シェールガス事業者は今の原油価格水準では増産を決断できないだろう。

――2017年、世界経済はどう推移するでしょうか。

心配だらけだ。中国が債務国になるだろうし、欧州では政治的な混乱が避けられない。おそらく、いくつかの国、いくつかの大企業が破綻するだろう。サプライズの多い年になる可能性があるように思う。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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