自国への怒りが、諦めに変わる韓国の閉塞感 格差社会、「何をしてもムダ」と嘆く国民

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朴槿恵大統領のスキャンダルは、韓国に政治の混乱を巻き起こしただけでなく、国民心理にも深く影を落としつつある(写真:ZUMA Press/amanaimages)

11月29日、朴槿恵大統領は3回目の国民談話を発表し、「私の大統領職の任期短縮を含む進退問題を国会に委ねる」と宣言。事実上、退陣することを認めた。が、事態の収拾と身の潔白の証明を図ったであろう国民談話を聞いた韓国の人々の表情は、ただただ渋い。30代の会社員(男性)はため息をついて吐き出した。

もしも朴槿恵大統領が、会社の上司だったら…

「この期に及んで『私欲はなかった。周りが罪を犯しただけで自分にあるのは管理責任だけ。罪はない』と言い切るとは…。しかも、自分自身のことなのに、進退を国会に任せるなんてどこまで卑劣なのか。こんな上司が会社にいたら、ぶっ飛ばして、辞表を出しているかもしれない。何を訴えても国民の声は届かないのだと、再確認した」。

国政介入や名門女子大に通っていた娘の不正入試などの疑いがもたれている崔順実(チェ・スンシル)被告。この崔被告と友人関係にあった朴槿恵大統領が共謀関係にあると、韓国検察が結論を出した未曾有のスキャンダルは、発覚から1カ月経っても収まる気配はなく、混迷はなお深まるばかりだ。すでに国民の怒りは頂点に達し、デモの規模も膨れあがっていたが、今回の朴大統領による国民談話の後では、とうとう、あきらめにも近い声が聞こえ始めた。

韓国社会が混沌とする中、「何をしてもムダ」という喪失感や無気力感を覚える人が続出し、メディアでも「順実(スンシル)症」として取り上げられるようになっている。ソウルで話を聞いた学生や会社員からは、そんな「スンシル症」の一端が言葉ににじみ出ていた。

「努力しても、一生懸命がんばってもすべて無駄で、結局はおカネのある人が世の中をうまく渡っていくんだなって、しみじみ思いました。最初は怒りが強かった。けれど、最近はデモに参加していても、世の中はこのまま変わらないかもしれない…そう思い始めてしまうと急に気力がなくなる。これから何かをしようという気持ちがまったく起きない」

こう話すのは、ソウルの街中で出会った21歳の女子大学生だ。崔被告の娘の大学入試不正問題から怒りがフツフツとこみ上げてきてデモにも参加しているが、怒りと同時にやるせない思いがどんどん膨らんでいるという。

30代の女性会社員も嘆いていた。「今回の談話にしても最初の謝罪にしても(朴大統領には)誠実さがまったく感じられない。そうやってどこまでも責任免れをするのか、と思うと嫌になるし、力が抜ける。もう、こんなばかみたいなゴタゴタは2度とごめん。毎週土曜日にはデモに参加しているけど、結局は昔の韓国のままかもしれないと思うと、ぞっとする。早く新しい国のシステムを整えてほしい」。

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