管理会計がビジネスに不可欠な理由 評価軸を明確化するメリットを享受せよ
意思決定と業績評価、2つの役割
管理会計の役割は、大きく分けて2つあるといわれる。ひとつは前述の価格の例が示すような、意思決定のためにいかに数字を使いこなすかということ。これはさらに、長期的に考えるものと、短期的に考えるものに細分化される。
そして、もう一方が、ROI(投下資本利益率)や資本コストなどを用いて、業績の評価や管理に役立てることだ。
「たとえば、企業が業績を売上で評価するなら、営業担当者は『コストをかけても売れればいい』と思います。粗利で評価するなら、『粗利が出るものを売ろう』と思うでしょう。でも『交際費はどんどんかけてもいい』と思うかもしれない。そこで、『交際費を引いた後の利益で評価する』と言えば交際費をあまり使わなくなります。
このように何を評価するかで、従業員の行動は変わります。そのため、企業全体が目指すべき方向にベクトルを合せた評価軸を採用する必要がある。その評価軸を、数値を用いることによって明確化していくのが管理会計の1つのテーマなのです。
ただし、それは部門ごとに適切に行う必要があります。コストダウンが必要な部門もあるだろうし、研究開発費などある程度のコストをかける必要がある部門もある。ですから全体の方向性をまず明確にした上で、そのグループ、部門、あるいは個人にどう動いてもらうかに合わせて、評価軸を変える必要があります。その際にも、管理会計を用いて数値化することで、部門ごとに何が必要かということがわかり、目標を適切に設定でき、フェアな評価を下すことができるというわけです」(西山教授)
また、急速に進行するグローバル化への対応という点でも管理会計を活用することは大きなメリットがある。
「グローバル展開が進んでいる企業でも、数値化することで、国を越えて業績を横に並べて評価できます。ここでも、フェアな意思決定が可能になります。また、戦略や状況を説明する際にも、数値化していると、国や地域の違いがより明確になります」と西山教授。