職場の妊婦は、なぜこんなにも辛くなるのか 思い込みで自分を追い詰めてはいけない

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私が第一子を妊娠した時のことです。尊敬する上長に妊娠を報告したとき、まず言ってしまったのは、「こんな時期に妊娠なんて、申し訳ありません」という言葉でした。せっかく抜擢してくれたやりがいのある仕事。当時は3つの組織をマネジメントしていたので、「メンバーにも申し訳ない」「期待してくれた上司にも申し訳ない」と本気で思いました。

同じようには働けないと思い込んでいる

すると、その上長は、お祝いの言葉の後に、「妊娠ってそんなに大変なの?」と真顔で聞いてきたのです。結構、衝撃的でした。「お前にとって大変で、これまでの仕事ができそうもなかったらすぐ言ってくれ。そうでないなら、これまでと同じ仕事を頼むよ」と言われたとき、私は「妊娠したら、これまでと同じようには働けない」と思い込んでいたことに気付いたのです。つわりが終わった頃で、これからどのようになるかはわからなかったけれど、その瞬間は体調も悪くはなかったのに、です。

あなたが「妊娠前と同じように働かなくちゃいけない」と思っているとしたら、逆の気持ちですね。それでも、思い込み、という部分では同じことのような気がするのです。私の場合は、その思い込みから解放され、状況が変わったらいつでも共有できる、と考えられたことが大きな安心材料になりました。無理しないで、今の状況を自分で判断しながら仕事すればいいのだ、と思えたら、本当に楽になったのをよく覚えています。

その後、同じ日に直属の上長に報告をしたのですが、彼には謝ったりしませんでした。でも、彼は、「もう普通のカラダではないのだから、業務を減らすことを考えよう」と私に言いました。私は、先に話していた上長との会話を思い出しながら、「今はこれまで通りに働けそうなので、仕事も減らさなくて大丈夫です」と答えたのですが、「いや、無理するなよ」と言われ、また「いえいえ、大丈夫です」と答える、というちょっと不思議な言い合いになってしまいました。

もし、直属の上長に先に報告していたら、何も考えずに業務を減らすことになっていたかもしれないな、とも思います。それに、「なんだか今は体調がよくて平気そうなんです。平気じゃなくなったらすぐにご相談しますね」とでも可愛く言えば良かったのに、「大丈夫です」と言い張ったりして、無理しているように思われても不思議はなかったのかも、とも思えます。

実は、その後に上司と一緒に外出したのですが、雨が降っていて歩きづらいのに、上司の歩く速度がすごく速くて、ついていくのに息切れしていました。そこで、「もうちょっとゆっくり歩いてくださいよ~」と後ろから声をかけたところ、振り向いて待っていた上司が、「妊婦だからって特別扱いするなって言ったり、気を遣えって言ったり、あーあ、って感じだな」と言ったんです! こみ上げたあの怒り、忘れないと思います、きっと(笑)。

あちらも怒っていたのかもしれないですけれど、人としての気遣いと、仕事の配分を考慮するのとは違う話ですよね? それさえも、「気遣い」というくくりでごっちゃになっていたのでしょうね。

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