糸井重里「ブラック企業が生まれる理由」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(下)

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「ほぼ日」は、Eコマースでしっかり稼ぐ優良企業。おカネ儲けと「楽しさ」はどうすれば両立できる?
糸井重里さんが主催する、「ほぼ日刊イトイ新聞(略称:ほぼ日)」が今年6月で15周年を迎えた。その記念として現在、渋谷のパルコミュージアムで「はたらきたい展。」が開催されている。展示会場で糸井さんと一緒に、これからの時代の新しい「はたらきかた」について考えてみた。 

 ※インタビュー(上):糸井重里「楽しいからこそ、仕事はできる」

世の中がおもしろくない、とは言うまい

――企業にいると、自分で仕事をつくり出す人もいますが、ほとんどの人は仕事が上からふってきます。それをきちんとこなしていくことも大事ですよね。

そうですね。展覧会で紹介している「99の『はたらく人』のことば。」にもありますが、萩本欽一さんが、「したくない仕事しか来ない」と言ってるんです。あんなに視聴率をずーっと稼ぎまくってきたのに、「不本意な仕事しかなかった。全部と言っていいぐらい不本意な仕事だった」って。それをやりたい仕事に変えるんだって。不得意な司会を「やってみろ」と言われて、「エエッ、司会なんてできないよ」と。でも、そこから始まるんです。

――自分の向き不向きは、あんまり決めつけないほうがいい、ということですね。

向いてない人ばっかりなんじゃないですか(笑)。

――ああ。そこから自分で向くようにしていく。

そうですね。

――いま「仕事がつらくてしょうがない。やめたい」と思ってる人に対して、どういう言葉をかけますか。

「ほぼ日」にも書いたんですけど、「世の中がおもしろくない、とは言うまい。それはオレのせいだからだ」と。今日、おもしろくなかったのは、オレがそうしたからなんです。これは誰にでも当てはまるんじゃないかなあ。

この2年間、ぼくは東北の被災地の人たちと付き合ってきたけど、家族や知り合いが亡くなって、家も財産も流された人たちに、いまの言葉をぶつけられないですよね。あの不本意きわまりない、理不尽なところから立ち上がってきて、それでも笑顔でいる人間の強さを、ぼくは尊敬してるんです。

「はたらきたい展。」では、「東北の仕事論。」と「気仙沼のほぼ日。」の展示も

だから、「つらい」側しか見えていない人は、なにがカッコいいかを見つければいいと思う。文句ばっかり言っている人を「カッコいいなあ」と思ったらそうすればいいし、不本意な状況にあっても、それを自分で変えた人が「カッコいいなあ」と思ったら、そのまねをすればいいじゃない?

――もし自分のまわりにいなかったら、本や映画なんかで探してもいいかもしれませんね。

そうそう。「そういう人になりたい」と思ったら、やっぱり気持ちや行動も変わってきますよね。あんまりガリガリの精神論を言うつもりはないんですが、ただ、「ポジティブな側からも見てごらん」とは言いたい。今の自分の環境なんて、よくないに決まってる。ぼくだってそうです。

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