糸井重里「ブラック企業が生まれる理由」 糸井さんと、これからの働き方を考えてみた(下)
※インタビュー(上):糸井重里「楽しいからこそ、仕事はできる」
世の中がおもしろくない、とは言うまい
――企業にいると、自分で仕事をつくり出す人もいますが、ほとんどの人は仕事が上からふってきます。それをきちんとこなしていくことも大事ですよね。
そうですね。展覧会で紹介している「99の『はたらく人』のことば。」にもありますが、萩本欽一さんが、「したくない仕事しか来ない」と言ってるんです。あんなに視聴率をずーっと稼ぎまくってきたのに、「不本意な仕事しかなかった。全部と言っていいぐらい不本意な仕事だった」って。それをやりたい仕事に変えるんだって。不得意な司会を「やってみろ」と言われて、「エエッ、司会なんてできないよ」と。でも、そこから始まるんです。
――自分の向き不向きは、あんまり決めつけないほうがいい、ということですね。
向いてない人ばっかりなんじゃないですか(笑)。
――ああ。そこから自分で向くようにしていく。
そうですね。
――いま「仕事がつらくてしょうがない。やめたい」と思ってる人に対して、どういう言葉をかけますか。
「ほぼ日」にも書いたんですけど、「世の中がおもしろくない、とは言うまい。それはオレのせいだからだ」と。今日、おもしろくなかったのは、オレがそうしたからなんです。これは誰にでも当てはまるんじゃないかなあ。
この2年間、ぼくは東北の被災地の人たちと付き合ってきたけど、家族や知り合いが亡くなって、家も財産も流された人たちに、いまの言葉をぶつけられないですよね。あの不本意きわまりない、理不尽なところから立ち上がってきて、それでも笑顔でいる人間の強さを、ぼくは尊敬してるんです。
だから、「つらい」側しか見えていない人は、なにがカッコいいかを見つければいいと思う。文句ばっかり言っている人を「カッコいいなあ」と思ったらそうすればいいし、不本意な状況にあっても、それを自分で変えた人が「カッコいいなあ」と思ったら、そのまねをすればいいじゃない?
――もし自分のまわりにいなかったら、本や映画なんかで探してもいいかもしれませんね。
そうそう。「そういう人になりたい」と思ったら、やっぱり気持ちや行動も変わってきますよね。あんまりガリガリの精神論を言うつもりはないんですが、ただ、「ポジティブな側からも見てごらん」とは言いたい。今の自分の環境なんて、よくないに決まってる。ぼくだってそうです。