「第一生命」株式会社化・上場後のシナリオを読む 急浮上する損保ジャパンとの経営統合説

「最終的な狙いは、損保ジャパンとの経営統合だろう」

2010年度上期における相互会社から株式会社への転換と株式上場方針を正式表明した第一生命保険。その真意と心意を、ある国内生保首脳はズバリこう読み解く。

「(少子化など)厳しい市場環境で持続的な成長を実現するためには、より柔軟な経営戦略を取りうる組織形態に変更し、また市場の規律に基づく透明性のより一層高い経営を目指していく必要があると判断した」--。これが現時点で第一生命が掲げる株式会社化の目的だ。しかし相互会社のオーナーである契約者にとって株式会社化は必ずしも利益をもたらすイベントとは限らない。株式会社化に費やす膨大な事務コストと労力は経営にとっても少なからざる負担だ。それにあえて目をつぶってまで形態転換を目指すなら、そこには漠とした趣旨ではなく、明確かつ具体的な戦略目的がなければならない。それが損保ジャパンとの統合劇では--というわけだ。

実際、これまで国内で行われてきた相互会社生損保の株式会社化にはすべて事前にはっきりとした狙いが示されてきた。

日本で初めて02年4月に株式会社化に踏み切った大同生命保険では、1999年1月に太陽生命保険との包括提携を表明。その時点で共同持ち株会社設立による経営統合の検討を進めることを打ち出し、03年4月の太陽生命の株式会社化を待って、現在のT&Dホールディングスを誕生させている。

一連の生保破綻劇で株式会社化が脚光

04年4月に株式会社化した三井生命保険も同様だ。資産内容の劣化などで資本基盤の強化を迫られていた同社は01年11月、三井住友銀行グループの全面支援による生き残り策を発表。その一環として株式会社化による同グループからの大規模な資本調達の道を選択した。

東京海上火災保険、日動火災海上保険と朝日生命保険および共栄火災海上保険との合従連衡構想も例外ではない。この再編劇では00年9月、東京海上、日動火災と朝日生命の3社が統合を視野に入れた提携で基本合意し、これに01年3月共栄火災も合流することが決定。共同持ち株会社設立に向け、当時、損保としては異例ともいえる相互会社形態をとっていた共栄火災がまず03年4月に株式会社化、次いで04年メドに朝日生命が株式会社に転換してグループに参加する計画になっていた。

しかしその後、共栄火災がJAグループ入りを表明して離脱(=株式会社化は予定どおり実施され、JA共済、農林中央金庫と信金中央金庫の共同出資に)。さらには朝日生命の財務内容に対する不安から東京海上が同社との統合を白紙撤回したことで結局は東京海上・日動火災2社によるミレアホールディングスの設立にとどまったものの、一連の過程で掲げられた株式会社化の狙いは当初から明確だった。そしてこれらの相互会社からの株式会社転換以外の事例は、いまのところ旧東邦生命や旧千代田生命など破綻処理のプロセスの中にしかない。

相互会社の経営者にとって株式会社に転換することは、それ自体が目的でなく、あくまで手段の一つ。ならば、なおのこと「その必要性を契約者に端的かつわかりやすく説明する責任がある」(T&Dホールディングス幹部)ということだろう。

日本で保険相互会社の株式会社化が認められるようになったのは、96年の保険業法改正がきっかけだ。ただ大量に発生すると予想される端株処理手法の規定があいまいなど制度設計の不備が指摘され、当初、活用を表明する会社はまったくなかった。

流れが変わったのは、97年の旧日産生命を皮切りに生保の破綻が相次ぐようになってから。破綻回避の手段として株式会社化による円滑な資本調達のメリットが強調されるようになり、00年6月の業法一部改正で端株の一括売却制度を盛り込むなど株式会社化を簡便にする法律上の仕組みが整備されたことによる。さらに東証と大証も上場審査基準の見直しを行うなど早期上場を可能にする措置を導入。株式会社化、即上場に道筋を開いた。大同生命の株式会社化はこうしたインフラ整備のうえに実現したもので、その後の株式会社化のモデルともなっている。

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