「所得150万円増加」って、どういうこと? GDP(国内総生産)とGNI(国民総所得)の違いは

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しかし、それならば所得倍増計画が「国民総生産=国民総所得=国民総支出」という三面等価の原理を使ってGNP(国民総生産)の倍増を国民所得の倍増と言い換えたように、GDP(国内総生産=国内総所得GDI)を目標にしてもよかったはずだ。「国内」概念をわざわざ「国民」概念にもどしたことには、もっと深い意味がある。

日本のGNI はGDPを上回っており、しかも年々その差は大きくなっている(図)。1994年度に、名目GDPは495.6兆円だったが名目GNIは3.9兆円多い499.5兆円だった、2012年度には、名目GDP474.7兆円に対してGNIは490.1兆円となっており、その差は15.4兆円に拡大している。つまり、1人当りの名目GDPを150万円増やすという目標よりも、GNIの方が達成できる可能性が高いのだ。

海外からの利子や配当が増えてGNIのほうが拡大

政府は自国民のために活動を行っているので、日本国内にいようが海外にいようが、国民のために政策を行うのは当然だ。これがかつて、国内総生産ではなく国民総生産が指標として使われていた理由だ。

しかし経済活動が国際化するに従って、各国とも自国民の経済活動を把握することは困難になっていった。例えば日本国内で行われている経済活動を、日本国民によるものと外国人によるものとに区別することは極めて困難だ。

さらにGNPには日本人が海外で行った生産活動が含まれるが、これは海外の経済状況に大きく左右される。日本国内の経済活動水準を表す指標としては、GNPよりもGDPの方が適切だと考えられるようになった。このため世界各国で経済政策の目標がGNPではなくGDPに変わっていった。

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