「所得150万円増加」って、どういうこと? GDP(国内総生産)とGNI(国民総所得)の違いは

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成長戦略の素案のように、日本の名目GDPが今後10年間平均3%成長すると、2012年度474.7兆円から2022年度には637.9兆円になる。2012年度のGNIは490.1兆円で、2012年10月の総人口1億2751万5000人で割ると、一人当たりは384.3万円だ。

人口がそのままなら、10年間で150万円増加させるには、年平均3.4%増加する必要がある。だが日本の総人口が2022年には1億2423万9000人に減少すると予想されているので、必要な名目GNIの平均成長率は3.1%となって2022年度には663.8兆円になる。

利子・配当所得が増えても、賃金はあまり増えない

名目GDPの成長率が3%で名目GNIの成長率が3.1%という、0.1%ポイントの差はごくわずかに見えるが10年間続けるとかなりの違いを生む。GNIとGDPの差は、2012年度の15.4兆円、名目GDP比3.2%から、2022年度には26兆円4.0%へと膨張することを素案は暗に想定していることになる。

人口減少が続く我が国では、GDPの増加は難しいがGNIの増加はより容易だという議論は良く見られる。GDPから再びGNIが注目されるようになったのは、人口高齢化によって日本国内では生産年齢人口が減少してしまうので国内生産を増加させるには制約が多い。一方で対外純資産が増加して海外からの所得があれば、「所得」の増加が可能だと考えられるからであろう。

ロストウの経常収支発展段階説にある、貿易サービス収支黒字と所得収支黒字の両方がある「未成熟の債権国」から、貿易サービス収支は赤字化するが所得収支黒字によって経常収支黒字が維持される「成熟した債権国」へと移行するという考え方も背景にある。

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