進次郎氏らが掲げる社会保障の将来像を読む 「人生100年時代」へ改革はすでに始まった

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年金、医療、介護と改革論議のメニューを見ていても、わが国の社会保障制度はどちらの方向に向かって歩もうとしているのか、一見するとわからないかもしれない。財源を取れるところから取るとか、給付がいらなさそうなところからカットするとかの、単なる場当たり的なものなのかと、疑う人もいよう。

そこで、冒頭の提言「人生100年時代の社会保障へ」である。目下議論している社会保障の改革項目を実行すると、その先にどんな社会保障の将来像があるかが窺える。

この提言では、長寿化に伴い2020年以降は「人生100年を生きる時代」になり、雇用形態や老後の生活が、終身雇用・定年という1つの生き方でなく、多様な生き方が当たり前になるとみる。そして、現在の労働法制や社会保障はこうした変化に対応できておらず、「人生100年」に合わせて改めるべきとして、次のような提言を盛り込んでいる。

「勤労者皆保険制度」の背景に働き方の多様化

いかなる雇用形態であっても、企業に働く人が全員加入できる「勤労者皆社会保険制度」の創設、年金受給開始年齢を柔軟化した「人生100年型年金」への転換、禁煙など健康に努める人の医療費や介護費の自己負担割合を軽くするなど健康増進にインセンティブを与える「健康ゴールド免許」などを打ち出した。

この提言に対し、茂木政調会長は「極めて野心的な内容だ」と評価した。「勤労者皆社会保険制度」、「人生100年型年金」、「健康ゴールド免許」というキャッチフレーズに目が行きがちだが、これらの子細について提言ではまだ明言していないから、賛否は分かれるだろうし、頭ごなしに批判しても意味がない。

むしろその背景となる概念を踏まえると、目下議論中の社会保障に関する改革項目の位置づけが見えてくるように思われる。「勤労者皆社会保険制度」の発想の背景には、長寿化と働き方の多様化と連動して、一人ひとりのライフスタイルに合った年金制度を実現する意図が読み取れる。

企業の社会保険は、主に正規雇用のみを対象としており、一定の所得・勤務時間に満たない勤労者は、厚生年金や健康保険に加入できず、十分なセーフティネットの対象になっていない、との認識を示し、「勤労者皆社会保険制度」の創設を打ち出した。これは、今臨時国会で議論されている、年金制度改革関連法案に盛り込まれている被用者保険の適用拡大や、年金機能強化法改正案に盛り込まれた年金の受給資格期間の10年への短縮と、軌を一にしている。逆に言えば、今臨時国会での年金の議論は、正規も非正規も同じ社会保険に入る「勤労者皆社会保険制度」にたどり着く手前の重要な一歩ともいえる。

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