トランプ新政権は本当に財政拡張となるのか 財政政策には議会共和党の協力が必要

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11月10日、トランプ次期大統領は議会を訪れ、ポール・ライアン下院議長(右)ら共和党幹部との関係修復に着手した(写真:ロイター/アフロ)

11月8日(現地時間)に行われたアメリカ大統領選挙の結果、ドナルド・トランプ氏が次期大統領になることが決まった。来年から始まるトランプ次期政権は、どんな財政政策を展開するだろうか。

トランプ氏は、大統領選挙期間中から、オバマ現政権や民主党のヒラリー・クリントン候補への批判は多かったが、トランプ氏の大統領候補受諾時に採択した共和党の政策綱領はあるものの、自らの経済政策を体系的に提示することはあまりなく、演説などで断片的に訴える程度だった。また、共和党の大統領候補でありながら、選挙期間中の過激な発言などで共和党主流派の有力者との対立が深刻化していたから、トランプ氏が大統領に就任すれば、直ちに共和党が元来唱えてきた政策を実行するとは限らない。むしろ政策志向が共和党主流派と微妙に異なる点が目立つ。

「小さな政府」志向の共和党主流派

トランプ氏は、選挙期間中に、財政政策に関して次のような政策を唱えていた。今後10年間で連邦法人税を35%から15%へ引き下げること、富裕層に減税すること、インフラ投資を拡大すること、オバマケアを廃止することなどである。

ちなみに、トランプ氏は、当選直後の11月11日にオバマ大統領と会談した際、オバマケアの仕組みの中で、保険会社が患者の既往症を理由にした保険加入の拒否を禁止すること、同居する子どもが成人後も一定期間は親の保険に加入し続けられることの2点を評価し、オバマケアの廃止を再考することを示唆した。とはいえ、オバマケアを現行のまま変更なく残すことはなく、何らかの見直しを行うことを意図している。

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大統領選挙と同日に行われた連邦議会議員選挙では、上下両院とも共和党が多数派となる結果となった。共和党は、伝統的に「小さな政府」指向である。トランプ氏が唱えた財政政策のうち、減税とオバマケアの見直しは、共和党主流派も概ね賛成するものと思われる。

しかし、インフラ投資の拡大は、他の歳出削減によって財源を確保するなど、財政赤字を増大させない方法で行わなければ、共和党内で支持が集まらない可能性がある。

他方、「トランプ政権の『破壊力』は最初から爆走する」でも指摘されているように、高齢白人向けの医療給付を削減することには、トランプ氏は抵抗するとみられる。

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