円暴落とハイパーインフレで、日本は復活する 伝説のトレーダー、藤巻健史氏が語る「本物の円安論」(下)

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安倍政権誕生以降、急激な円安が進み「為替」への関心が高まっている。円安は本当に日本経済を救うのか? それとも輸入物価の高騰を招き国民生活を疲弊させてしまうのか? そこで、『円安vs.円高 どちらの道を選択すべきか』を著し、「円安こそ日本再生の最強の処方箋」と主張する藤巻健史氏に、日本のあるべき通貨政策について語ってもらった。第2回目(第1回はこちら)「通貨政策がいかに国家の命運を決めるのか」、さらには「アベノミクス政策の見通し」について明らかにする。
藤巻 健史 ふじまき たけし 元モルガン銀行東京支店長、日本を代表する債券・為替・株式トレーダーの1人。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行入社。1980年ノースウエスタン大学ケロッグスクールでMBA取得。1985年モルガン銀行に転職し、「伝説のトレーダー」の異名をとる。ジョージ・ソロス氏のアドバイザ—を経て、現在はフジマキ・ジャパン代表取締役。

円安による再生というと、すぐに輸出産業のことが頭に浮かぶでしょうが、円安で再生するのは輸出業者だけではありません。農業も再生するのです。内需産業の代表格である農業をダメにしたのも、実は円高だということを述べたいと思います。

農業をダメにしたのも円高、円安ならTPPも怖くない

 先日、沖縄に旅行した際、名産のサトウキビ畑が1980年代に訪れたときと比べて激減した印象を受けました。往時の1ドル=240円から80円と円が3倍も強くなり、外国産砂糖が3分の1の値段で買えるようになったからです。沖縄産のサトウキビが競争力を失うのも無理はありません。農業も製造業と同じで、国内需要をいくら喚起しても、円高を是正しなければ、儲かるのは国内の生産者ではなく外国の生産者ばかりです。農業問題の核心は一農家、一農業団体の努力の限界を超えた為替問題にあると見るべきでしょう。

 ですから、TPP(環太平洋経済連携協定)問題も、為替の視点を持たないと事の本質を見誤ってしまいます。TPPの議論を聞くたびに思い出すのが、2001年に安い中国産野菜の輸入が急増したときのことです。農業団体が霞が関の経済産業省前に押し寄せ、「セーフガード(緊急輸入制限)の本格発動」を求めるビラを配っていました。あのとき、私はこう思ったものです。農家の人たちは経産省の前ではなく、通りを渡って反対側の財務省か、あるいは国会の前で「円安を!」のビラを配るべきだと。TPP問題もまったく同じ構造なのです。

次ページ輸入農産物の問題も、本質は関税ではなく、為替
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