沖縄の米海兵隊、カリフォルニア移転は可能? 有力シンクタンク、ランド研究所が発表したレポートの中身

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皮肉にもケスラー証言のわずか数日前に、米国で強い影響力をもつシンクタンク、ランド研究所が、米軍を国外に駐留させるコストと戦略的利点に関する大部の調査研究報告書を発表した。

この調査研究は、2012年度の国防権限法案に関連して、連邦議会から委託を受けて行われたもので、「現在、沖縄に駐留する海兵隊のうちのほとんどをカリフォルニアに移転させたとしても、有事の際のレスポンスタイムに大幅な遅延を来すことはない」と結論づけている。

報告書は、高度な訓練を受けた「特殊作戦対応」部隊である第31海兵隊遠征隊(MEU)のみを、沖縄にとどめることを提唱している。第31海兵隊遠征隊は、7つの海兵隊遠征隊のうち、海外に拠点を置く唯一の部隊だ。この部隊は、約2500名の海兵隊と、佐世保基地を拠点とする海軍艦艇の特別な「水陸両用即応グループ」で構成されている。

第31海兵隊遠征隊は、ほぼ完全に独立した作戦行動が可能だ。即座に展開し、完全に態勢を整えて、1カ月以上にわたり作戦を遂行できる。

辺野古案は賢明なのか

これとは対照的に、沖縄に駐留するその他の海兵隊の準備態勢は、グアムに事前配置されている補給船との「兼ね合い」に左右される。また、有事の際に、第3海兵遠征軍(米海兵隊の海兵遠征軍のひとつで、司令部は沖縄県に置かれている)に属する多くの部隊を展開するには、沖縄県外に拠点を置く輸送機による、何百回もの空輸が必要となる。

要するに、ランド報告書が示唆するのは、危機発生地域へ米軍を展開する際に、沖縄からではなくカリフォルニアから部隊を送り出したとしても、第3海兵遠征軍のレスポンスタイムに悪影響は出ない、ということだ。

ランド研究所の報告書の結論からすると、普天間の代替施設を辺野古に建設すべきだという主張は、米国にとって、はたして政治的・戦略的に賢明な判断なのだろうか、という疑問が再び生じてくる。米国は、沖縄本島の辺野古地区に計画されている代替施設が建設されないかぎり、普天間飛行場を使用し続ける、と主張し続けている。

その一方で、日本に駐留する米軍の大部分が集中する沖縄では、住民の大多数が、普天間の代替施設は沖縄県以外に建設すべきだと訴えている。両者の主張は今もすれ違ったままだ。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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