日本のLCCが「鉄道の強敵」になれない理由 安定性でビジネス客は敬遠、燃料税もネック

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国内のLCC各社(新規参入の航空会社)は、LCCのパイオニアである米サウスウエスト航空の特徴である格安運賃、エコノミークラスだけのモノクラス、A320やB737などの定員150~180人程度の単一機材による高頻度運航という点を見習い、市場へ参入しようとした。

2012年3月1日から関西~福岡・札幌線に就航したピーチ・アビエーション(APJ)は、サウスウエスト航空の考え方をベースに、アイルランドのライアンエアーの「基本運賃プラス付加料金」という考え方を加えて市場に参入してきた。機内の飲食や手荷物預かり、座席の事前指定などは付加料金という考え方である。

日本のLCCを取り巻く環境

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ジェットスター・ジャパン(手前)とピーチ・アビエーション(奥)の旅客機(撮影:尾形文繁)

日本では、新規参入の航空会社やLCCは育ちにくい環境にある。欧米と異なり第2空港になりうる空港が限定されることに加え、航空機の整備や発券のみを行う事業者もほとんど存在しない。また航空燃料税に加えて、空港の発着料・駐機料などの公租公課が高いことも挙げられる(航空燃料税を徴収している国は、日本と米国だけである。米国では1円/L程度であるのに対し、日本では26円/Lも徴収している。徴収された航空燃料税であるが、米国では空港のセキュリティの強化に使用されるのに対し、日本では空港建設や滑走路の延長および増設に使用される)。

日本のLCCには、APJ以外にジェットスター・ジャパンやバニラ・エア、春秋航空ジャパンが存在する。 LCC全般について言えるのは、資金面で脆弱であるから予備機を持たず、機材の稼働率を高めて利益を出すというビジネスモデルを採用していることだ。予備機がないため、もし機材のトラブルや悪天候などの理由で遅延が発生し、機材のやり繰りが困難になると欠航につながりやすい。

また、LCCはオフピーク時の運賃だけを見ると格安だが、座席の指定や10kgを超える手荷物の持ち込みなどは追加料金が必要である。機内での飲食を含めた各種サービスを受けると、FSA(Full Service Airline、フルサービスの従来型航空会社。レガシーキャリアともいう)との運賃格差は小さくなる。また子供運賃の設定がないため、LCCは安いと決め込んで利用すると、FSAよりも割高になることもある。電話による問い合わせも有料であり、電話予約はインターネット予約よりも割高となる。

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