東京五輪、建物はほとんど「プレハブ化」せよ 建設費も問題だが、ヤバイのはムダな維持費

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人は建物を見に来るのではない。その中のコンテンツに興味があるからこそ、移動するわけであって、それが世界最高のアスリートの祭典であれば、椅子が多少ボロくたって何の問題もないはずだ。つまり、国民が税金を払って赤字を被るのか、黒字にできる範囲の施設で我慢するか、道は二つに一つしかないのだ。

私もブラジル五輪を見て来たわけだが、小池都知事もご覧になったはずだ。カネがなかったために、「完全に新設の施設」は、ほぼゼロ。国技のバレーボールはサッカーで有名なマラカナンスタジアムの横にある古びた体育館で行われ、男子トイレなどはただの溝にみんなで並んで放尿する、という失礼ながらトンデモナイ代物だ。

またビーチバレーボール会場は、完全にプレハブでオリンピックが終われば取り壊すてはずになっていた。そんな施設で競技をやって、リオ五輪が盛り上がりに欠けた、という評判を耳にされたか? 関係ないのである。
オリンピックはアスリートの祭典であり、建物の祭典ではない。必要最低限の施設(例えば、国際基準のバレーボール専用のフロアなど)があればいい。ファンは建物など見ていない。競技を見ているのだから。

ほぼすべての建物は「プレハブ」で足りる

つまり、国立競技場を除けば、ほぼすべてプレハブでOKのはずだ。日本のプレハブ技術は、それこそ世界に類を見ないほどのレベルであり、それを「日本の売り」にしたって新たなビジネスチャンスの創出にもつながる可能性すらある。あれほど頑丈で震災にも耐えるレベルのプレハブなら、開発途上国は、それこそ恒久的な建物はいらない、と言い出すのではないか、とも考えられる。

プレハブ施設の方も、とんでもない予算に膨れ上がっているという話も出てきているが、恒久建設物の維持管理費に税金を投入することを考えるならそれでもまだまし、というべきだろう。

考えねばならないのは、その施設のPLとキャッシュフロー。黒字にならない施設はオリンピックのあと取り壊す。何百億円も使って、昔ここでオリンピックがありました、なんて記念碑を建てたら、それこそ墓石である。

今なら間に合う。至急、必要最低限のもの以外のプレハブ化を急ぐべし。いかにサステナブル(持続可能)なものが作れるか、これこそ、日本が世界に示すよいチャンスだろう。

ぐっちーさん 投資銀行家

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ぐっちーさん ■本名:山口 正洋(やまぐち まさひろ)。投資銀行家。1960年東京都港区生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。丸紅を経てモルガン・スタンレー、ABNアムロ、ベア・スターンズなど欧米の金融機関を経て、ブティック型の投資銀行を開設。M&Aから民事再生、地方再生まで幅広く ディールをこなす一方、「ぐっちーさん」のペンネームでブログを中心に大活躍。2007年にはアルファブロガーを受賞、有料メルマガも配信中。さらに『AERA』や『SPA!』で連載をもちつつ、テレビやセミナーでも人気。主な著書に『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』(東邦出版)、『ぐっちーさんの本当はすごい日本経済入門』『ヤバい日本経済』(後者は共著、いずれも東洋経済新報社)などがある。競馬予想も一流。一方でメインレースはほどほどで、平場の条件戦などを好む。【2019年9月29日19時編集部追記】2019年9月24日、山口正洋さんは逝去されました。ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。

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