ブリヂストン、増加する手元資金の使途は? 慎重な中期計画から裏読みできる次の一手

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こうした直営チェーンを拡充しようとしているのは、高付加価値タイヤの販売を強化するため。顧客と直接向き合い、きめ細かいサービスを行い、様々な提案を行うには自社の直販網を保有することが有効と見ているからにほかならない。

たとえばパンクに強いランフラットタイヤなどの販売強化にも直営店の活用が有効となりそうだ。パンクしても数十キロは走ることができるこのタイヤは順調に売り上げを伸ばしている。特に米国のように国土が広く、悪路も多い地域でニーズが高い。

手元資金は6000億円を突破

中計を発表する津谷正明CEO(記者撮影)

砂漠の中でパンクした場合、修理する場所(直営店)が近くになければ、ドライバーはきわめて危険な状況に追いこまれる。また、このタイヤであれば、スペアタイヤを積まずに済むため、軽量化により燃費が向上するだけでなく、現実的に車内スペースの確保にもつながる。このため、補修用だけでなく、新車向けにもデザイン段階から提案する動きも始まっているようだ。

ペップの買収合戦では価格競争となり、最終的には経済合理性がないとの判断からあきらめたが、手元資金は潤沢だ。現預金と有価証券の合計(ネットキャッシュ)は前期6000億円を突破。今期も前年同期比を上回って推移するなど、順調にキャッシュを積み上げており、期末時点では7000億円近くに増加する見通しだ。それだけ、このキャッシュの使い途が注目される。

中期経営計画で掲げたROE12%以上、営業利益率10%以上という目標は前期実績や今期計画も下回る保守的な数値だ。これは買収による多少の利益率低下を織り込んでいるとも裏読みできそうだ。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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