安倍政権が描く、「医療・介護改革」の姿 守れるか社会保障制度 見えた医療改革の方向性
国保は都道府県に移管
国保の基盤強化では、運営を現在の市町村から都道府県単位に広げる案に加え、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度への現役世代の支援金について、給与が高くなるほど保険料が上がる「総報酬割」を全面導入。これによって浮く国庫負担2000億円を国保の赤字補填に使う案が出ている。
高齢者支援金は加入者の人数に応じた「加入者割」が基本になっているが、これを総報酬割に転換すれば、加入者の所得が高い健保組合の負担は増える代わりに、中小企業主体の協会けんぽに対する国の補助金が約2000億円減少、国保の補填財源を生み出すことが可能になる。
国保は公的な健康保険制度の一つで、無職の人やパートをはじめとする非正規労働者、自営業者などが加入。しかし、高齢化で医療費の支払いがかさむ反面、非正規雇用によるワーキングプアの増加によって収入基盤は細り、赤字が慢性化している。
財政基盤の弱い市町村では保険料が高騰。自治体間格差が問題となっているほか、低所得者の中には保険料が支払えず無保険状態に置かれる人も出てきている。国民皆保険を国是とする日本にとって、「最後の砦」である国保を守り抜くことは改革の大前提といえる。
そして、さらにその先に控えているテーマが病院機能の抜本再編だ。
日本の医療は、国際的に見て人口1人当たりの病院・病床数が突出している反面、病床当たりの医師・看護師数は少なく、過重労働が常態化。医療機関の役割分担があいまいで、診療科目や医師の配置が地域的に偏り、救急患者が受け入れ不能になる事態もたびたび指摘されている。さらに、リハビリや在宅療養・介護の体制整備も遅れているため、入院が長期化し、それが医療費を圧迫している。
しかも、こうした問題は今後の超高齢化でさらに深刻化することが明白だ。図のように、医療・介護の受け入れ能力と高齢化の度合いは地域で大きな差があり、このままいくと北海道などでは能力がダブつく反面、埼玉県和光市や愛知県岡崎市をはじめとした大都市圏では受け皿が不足し、医療・介護難民が発生することが予測されている。しかし、日本は民間病院が多く、公立病院中心の欧州と違って国がトップダウンで再編するには限界がある。
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