中国高速鉄道が弱みの安全性を補う"奇策" 大陸横断する「旅客・貨物兼用」列車の構想も

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2階建て高速列車の内部。2階(上)は客室、1階は貨物©CRRC

イノトランスの会期中、中国の鉄道車両製造を担う「中国中車」のブースには数多くの列車の模型が展示されていた。中国中車は中国の車両メーカー2社が2015年に合併して発足。4兆円に迫る売上高は2位以下を大きく引き離す。しかし、中国以外の国からの売り上げは全体の1割強にすぎず、工場の稼働を維持するためには、外国売上比率の引き上げが急務となっている。

ブース内でひときわ来場者の関心を引いたのが、「2階建て高速列車」の模型だ。日本では30年以上も前の1985年に新幹線100系に採用され、JR東日本はE1系、E4系というオール2階建て車両も開発した。フランスの高速鉄道TGVも2階建て列車を有しており、決して目新しい技術ではない。

しかし、日本やフランスとの決定的な違いは、この列車は2階を旅客列車、1階を貨物列車として活用するという点だ。「中国の高速鉄道はさまざまな環境下を長時間走る」という周氏の発言は、新幹線との違いだけでなく、大陸横断高速列車も念頭に置いているようだ。とはいえ、技術的に可能だとしても、ヨーロッパと欧州の間を高速列車で移動したいという人がどのくらいいるのか、週に何便運行するのか、料金設定をどうするのか、など実現性についての疑問符はつく。

「レールマン」と叫んだ理由

中国中車とTUVノードの業務提携契約調印式(記者撮影)

中国鉄路の記者会見の前日、9月20日には、中国中車と、世界最大級の品質管理認証サービス会社「TUVノード」(ドイツ)の業務提携が発表された。

調印式に先立って行なわれたプレゼンテーションで、同社の余衛平副総裁は、ハリウッド映画「アイアンマン」の映像をバックに「ウィー・アー・レールマン」と大声で叫んだ。会場があっけにとられる中、余副総裁はこう語った。「アイアンマンは一人では空を飛べない。秘書や友人、多くの仲間に支えられているから空を飛べる。鉄道も同じ。我々は “レールマン”。仲間といっしょに鉄道を走らせる」。

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