KDDI、「スマートバリュー」武器に最高益 前年度決算は好調、頻発する通信障害に社長自ら対応

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KDDIは4月30日、都内で会見を開き、前年度(2013年3月期)決算を発表した。営業収益は前期比2.5%増の3兆6622億円、営業利益は7.3%増の5126億円と増収増益だった。主軸となる携帯電話の契約純増数は260万件。下期は「iPhone5(アイフォーン5)」人気を背景に契約数を伸ばした。「番号持ち運び制度(MNP)」を利用した他社からの流入も過去最高の101万ユーザーにのぼるなど、顧客獲得競争では好調が続いた。ただ、音声通話の減少の影響などで通信料収入は減少している。

スマホ新規の39%がスマートバリューに同時加入

一方、固定回線は堅調に利益を積み重ねている。これはスマホのセット割引「auスマートバリュー」の貢献が大きい。1~3月でみると、固定回線の新規契約のうち55%が、そしてスマホの新規契約のうち39%のユーザーがスマートバリューに同時加入している。そのほか、前期にあった周波数再編に関するコストが大幅に減少(約600億円のプラス効果)したことで、営業増益となっている。

今14年3月期については、営業収益が13%増の4兆1400億円、営業利益は22.9%増の6300億円を計画している。携帯電話の通信収入は5期ぶりに増収に転換し、固定回線の通信収入も着実に増収となる見込みだ。また、ケーブルテレビ大手のジュピターテレコムが連結されることで、営業収益で3600億円、営業利益は600億円程度のプラスを見込んでいる。

同時に、田中孝司社長は、16年3月期まで、「営業利益は毎期2ケタ成長、配当は配当性向30%超」を目指す方針も発表した。スマートバリューによる契約獲得に加え、アプリ取り放題の「スマートパス」(月額390円)を軸とした、「うたパス」(音楽聴き放題で月額315円)、「ビデオパス」(動画見放題で月額590円)など、各種サービスの会員数を伸ばし、データ通信収入を拡大する構えだ。

一方で、昨年末、4月16日~19日、4月27日と各種の通信障害が頻発していることについて、田中社長は「年初から対策をしてきたのだが、また障害を起こしてしまい、皆様に大変申し訳ないと思っている。いずれも独立した要因だが、内部に本当に問題がないのかどうなのか、私自身が先頭に立ってチェックしていきたい」と自ら改善に乗り出す方針を明らかにした。

(撮影:尾形 文繁)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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