米中の「2015年極秘計画」を知らない日本 インテリジェンスのプロ、原田武夫氏が大胆予測

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 最新
拡大
縮小

かつて「プラザ合意」(1985年)の円高を受けても呆けたままであり、平成バブルの中、金融立国化を図らず、あやうく自滅しかけた(「平成バブル不況」)日本の二度轍を踏まないためには、中国に残された手段はただ一つ。徹底した金融規制緩和を行い、アジア、いや世界の金融センターとなるしかないのだ。

事実、中国は年限こそ入れていないものの「人民元改革」についてシナリオを公表しており、そうした中国を手伝うべく、英国や米国の銀行たちが続々と擦り寄ってきている。そう、「製造業から金融業へ」こそが、習近平政権が密かに実現しつつある大戦略なのだ。

日本は米中パワーゲームの中で「狭き道」を進むしかない

哀れなのは「円高少子高齢化」を理由に、今や恐ろしいほど内陸部にまで中国での拠点を構築してしまった我が国モノづくり系企業である。これらの企業の多くは低廉な労働力を利用して安く製品を造り、これを我が国国内へ送る、いわゆる「アウト・イン」というビジネス・モデルに依っている。しかし恐らくは2015年を目途に「金融中心への大転換」の名目の下、人民元の為替レートが完全に自由化し急騰すれば、人民元高・円安となり、もはやこのモデルは成り立たないどころか、巨額の損失すら招いてしまうのである。

「要するに、原田さんの言っている米中の大戦略が2015年に現実になってしまえば、我が社の中国にある生産拠点は赤字を垂れ流すことになるというわけですね」。冒頭に書いた福岡で会計士氏と共にモツ鍋をつついていた、モノづくり系中堅企業の社長氏がため息交じりでそうつぶやいたのが忘れられない。

だが、この大流から逃れることは我が国政府や大企業であっても、もはや不可能なのである。2015年に向けて進む米中の大戦略の中で食うか、それとも食われるか。「進むべき道はない。だが進まなければならない」という状況の中で今、私たち日本人全員のサバイバル・ゲームが始まっている。*5月(奈良)と6月(東京)に、原田氏の新刊記念講演会を行う予定です。くわしくはぜひ、こちらをご覧下さい。

原田 武夫 原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はらだ たけお / Takeo Harada

原田武夫(はらだ・たけお)株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役(CEO)。東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務公務員Ⅰ種職員として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。情報リテラシ―教育を多方面に向けて展開。自ら調査・分析レポートを執筆すると共に、国内大手企業などに対するグローバル人財研修事業を全国で展開。学生を対象に次世代人材の育成を目的とする「グローバル人財プレップ・スクール」を無償で開講。近著に『「日本バブル」の正体~なぜ世界のマネーは日本に向かうのか』(東洋経済新報社)、『インテリジェンスのプロが書く日本経済復活のシナリオ ――「金融立国」という選択肢』(中経出版)。9月に『それでも「日本バブル」は終わらない』(徳間書店)が刊行。12月6日に『ジャパン・ラッシュ――『デフレ縮小化』の中で日本が世界の中心となる』(小社刊)が刊行。 原田氏の話を直接お聞きになりたい方はこちらへ→2014年 年頭記念講演会、東京:1月18日、大阪1月26日

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT