黒田日銀総裁の大ギャンブル 脱出が困難な大規模国債購入策

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また、日銀はインフレ率2%の状態が持続されることが見えてくるまで、こうした緩和策を続けると市場に約束した。かつてマーティンFRB議長は、パーティーが盛り上がり始めたら、参加者から不満が出てもパンチボウル(酒が入ったボウル)をさっさと片付けるのが中央銀行の仕事だと述べた。だが、今回の日銀の決定は、パーティーで皆が酩酊するまでパンチボウルにアルコールを注ぎ続けると事実上宣言したようなものである。

 金融危機の際、市場で買い手が現れなくなってリスクプレミアムが高騰し、異常なアンダーバリューになった資産を中央銀行が買い支えることは、パニックの収束を図るという点で有用である(FRBの2009~10年のQE1がそれに相当する)。金融機関や投資家が自信を取り戻せば資産価格が平常レベルに戻るため、中央銀行の資産購入は儲かる可能性が高い。

しかし今回、日銀は市場でリスクプレミアムが高騰しているわけではない中で、大規模な資産購入を推し進める。結果、市場での価格形成を日銀が歪めていくことになる。それが長期化すれば、市場参加者が徐々に減り、自ずと市場の流動性は低下していくだろう。

資産価格が上がっても、一般物価は上がらないことも

そうなると、日銀は市場の資産をますます買い支えなければならなくなる。バブルが萎まないようにするには、政府が適切な成長戦略を進めていく必要が生じるが、それができなければ日銀は資産価格の押し上げ策からなかなか撤退できなくなる。

日銀にとっても最もつらいのは、資産価格が上がっても一般物価のインフレ率が継続して2%になりそうにないケースだろう。FRBが景気対策として資産を膨張させ始めたのは、2010年11月からのQE2以降だった。その直前のFRBの総資産は2.3兆ドル程度で、直近ではそれが3.2兆ドルへと膨張し、保有資産の残存期間も大幅に拡大している。

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