黒田日銀総裁の大ギャンブル

脱出が困難な大規模国債購入策

日銀が強烈な金融緩和によって国債の大半を買い占めてしまうため、市場では国債が足りないという事態が今後現れてくる。それは事実上、日銀が銀行や年金ファンドなどにムチを打って、彼らを国債市場から追い出し、よりリスクのある資産へと運用資金を振り向けるように強いる政策だと見なすことができる。

半ば強制的に国債市場から追い出しても、金融機関や年金が新たに取れるリスクには限界がある。それでも一部の資金は運用利回りを求めて海外の資産の購入に向かわざるを得なくなる。その過程で外為市場では円売りが生じるはずだという思惑から円安が進み、これが日経平均株価の上昇にもつながっている。

また、金融機関が国債運用を縮小して資金を貸し出しへ回そうとしても、今は優良企業の資金需要が弱いため、勢い資金の一部は不動産関連融資に向かいやすいだろう。そういった流れが起きやすくなるように日銀はETF(上場投資信託)やREIT(不動産投信)の購入額も増額して、株価や不動産価格の押し上げを狙うメッセージをより明瞭にした。 

市場を酩酊状態に陥れる日銀

4月4日以降、日銀は市場のエコノミストや銀行、機関投資家の幹部を数回にわたって呼び集め、新しい金融政策に対する説明会を行っている。日銀幹部は、景気回復によって需給ギャップを縮めることで2年以内にインフレ率を2%に押し上げることは不可能であるため、期待に働きかける政策を行うと説明している。

資産バブルや円安バブルを起こして国民や企業のマインドを「強気」に転換させ、多くの企業が値上げを行っても消費者がそれに従う環境が生まれれば、インフレ率は短期間でもう少し上がりやすくなるかもしれない。黒田総裁率いる政策委員会は、今回そのギャンブルに乗ることにしたのである。

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