黒田緩和が開けてしまった「パンドラの箱」

市場動向を読む(債券・金利)

4月4日に黒田東彦新総裁の下で、日本銀行が行った金融緩和の決定は、後世の多くの市場実務家、金融論や金融史の研究者たちによって何十年、あるいは百年といったスパンで語り継がれていくことになるだろう。

1930年代の世界恐慌を研究したFRB(米国連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長がリーマン危機後に行なった量的緩和が、歴史的な実験であると言われたが、今回の日銀の決定は、恐らくそれ以上の影響を後世に残すことになるのではないか?

歴史的な実験が微妙な均衡を崩した

そう考える理由は2つある。すなわち、

(1)世界史的に見ても類例のない巨額な公的債務を持つ国において、国債発行額の約7割を中央銀行が購入するという、その規模感。

(2)インフレを抑制するのではなく、デフレをインフレにするという、これもまた過去にない歴史的な実験の手段として、中央銀行による国債大量購入が行われること。

まず(1)の点について言えば、すでに日銀は白川総裁時代の金融緩和によって国債発行量の4割近くを購入しており、それが7割に増加したというだけで本質的な差異はない、という議論もありうる。しかし、今回の緩和を受けて、実際に日本国債の市場参加者がその規模の大きさに驚いてしまったことは否定し得ない事実である。

4日の政策発表後、10年国債金利は一時0.3%近くまで急低下した後、その2倍の0.6%強まで急騰した。そして、何よりも、今回の緩和の前後で生じた最も顕著な変化は、市場の乱高下の中で日本国債の「流動性」が著しく低下してしまったことである。

今回の日銀による緩和がもたらした「流動性」の低下によって、日本国債の市場の主たる投資家である、銀行や生保など大手の債券投資家は、自身が大量に保有している日本国債について、もはや市場で売りたい時に売ることのできる資産ではないかもしれない、との懸念を抱いてしまったのではないか。

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