黒田日銀、3つの想定内と3つのサプライズ 「4.4超金融緩和」で、国債はバブル&バブル崩壊へ

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株価は、4日に続き、5日も上がるかもしれない。だが、来週の8日以降はどうだろうか。材料出尽くしで下がるよりは、大きなサプライズであったために、そう簡単には失速しないだろうが、それでも米国雇用統計(現地時間5日)などに引きずられるようであれば、かなりヤバい。

黒田日銀が敷いた、国債バブル生成と崩壊のレール

黒田日銀は、もはや次の玉がない。今後、株価、景気が低迷した場合にはどうするのだろうか。市場が調子に乗って、さらなる催促相場の展開になってきたら、どうするのだろうか。

実際には深刻な問題が2つある。1つは、単純に、消費税引き上げの影響、駆け込み需要の反動減だ。このとき、景気は短期にかなり落ち込むと思われるが、このとき、サプライズを演出する金融緩和はほとんど存在しない。ゼロ金利にしてしまって、後がなくなったのが、これまでの日銀の失敗だったとすると、金融緩和の余地を、サプライズをもたらしてまで自ら放棄した黒田日銀は、今後、追い込まれたらどうするのか。

もう1つは、中小の金融機関である。今日の異次元の量的金融緩和により、彼らが破綻に追い込まれる期日が早まった。日銀がデュレーション7年としてしまうと、今日10年ものが0.425%まで下がったように、利回りが確保できなくなるから、超長期国債ばかりを買うしかない。大幅に値上がったものは、天井に達すれば、後は下落するしか無い。黒田日銀バブルとなった国債は、今後はあるタイミングから下落する以外、なくなる。つまり、必ず下落するタイミングが来ることになったのだ。

そのとき、必ず中小の金融機関はどこかが破綻する。預貸率20%、デュレーション8年という中小の金融機関が存在する以上、どこかは、金利上昇が始まれば、まもなく破綻する。しかし、景気が回復するにせよ、回復を金融政策でもたらすことが出来ず、金融政策が失敗に終わり、名目金利が上がるにせよ、必ず、国債は値下がりし、彼らのどこかは破綻する。

いよいよ、国債は、黒田日銀によってバブル、バブル崩壊へのレールを敷かれてしまったのだ。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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