日本株「上昇後に下落」の展開を見込むわけ 市場参加者の「米景気・金利観」が定まった

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米国市場がどちらの展開をたどるかは予断を許さないが、価格調整シナリオの場合、日本株は目先の上昇後、米国市場に巻き込まれる形で下落するだろう。加えて、9月下旬から年内は、いったん株価が下振れするものと懸念される。その要因とは主に2つある。

一つは、日本企業の税引後利益については、4~6月期は前年比で2割弱の減益だったが、7~9月期もアナリスト予想の平均値では2割強の減益が予想されている。7~9月期の決算発表が10月下旬から11月上旬に行なわれるため、その収益不振を市場が先取りして、11月上旬辺りまでは株価が下落気味で推移しうる。決算発表前に、企業が先行して自社の収益見通しを下方修正することも、増えていこう。ただし、そこで収益悪化を織り込み切ると、かえって先行きの収益改善に投資家の目が向かい、株価が底打ちをすると予想する。

もう一つは、9月21~22日の日銀金融政策決定会合で、金融政策の「総括」が行なわれる。市場では、総括の結果、金融緩和を加速するといった期待や、逆に物価目標を後退させ、半ば白旗を上げるのではないか、といった不安などが交錯している。こうした心理的なぶれが、金融政策決定会合が迫ると増幅され、市場の波乱要因となる展開が懸念される。加えて、すでに日銀にできる追加緩和手段は限られているため、9月の会合で日銀が何をやっても、市場の失望を招く恐れがある。

米大統領選だけではない円高の材料

9~11月辺りに米ドル安・円高が進み、それが日本株価の打撃となる恐れもある。まず、11月8日投票の米大統領・議会選挙に向けて、米国輸出業の雇用を守るために、米ドル安が望ましい、という発言が増えてきてもおかしくない。加えて、米財務省の半期為替報告書が10月に公表される予定だ(ただし、過去に公表が11月にずれ込んだことがある)。とりわけ米ドル高牽制のトーンを強めるとも考えにくいが、前回4月と同様、中国、ドイツ、韓国、台湾とともに、日本が「監視リスト」入りし、それが円高の材料となりうる。

以上の諸要因を踏まえ、今来週上昇が期待される日経平均株価が、その後年内はいったん下落する展開を見込むわけだ。足元(9月20日頃)の1万7500~1万8000円から11月頃1万6000円前後へ、そして2017年に2万円台奪回、という推移ではないだろうか。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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