安全保障のプロから見てトランプは危険だ

元共和党高官が不支持の理由を語る

共和党関係者のトランプ氏「不支持」表明が続いている〈写真:Carlo Allegri/ロイター)
米大統領選を2カ月後に控える中、共和党関係者の「トランプ離れ」が後を絶たない。8月8日、共和党政権下で働いていた共和党国家安全保障当局者50人が、ドナルド・トランプ氏ではなく、ヒラリー・クリントン氏を支持するという公開書簡を発表。15日には、共和党政権の高官を務めたアジア専門家8人がこれに続いた。彼らが抱く「危機感」とはどういうものなのか。8日の書簡に名を連ねた一人で、ジョージ・W・ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)アジア担当上級部長を務めた、マイケル・グリーン氏に聞いた。

 

――クリントン支持を決めた理由は。

予備選の間、私はジェブ・ブッシュ氏のもとで働き、彼にアジア事情を説明していた。トランプ氏に投票しようと思ったことも、彼の選対事務局内部で働こうと思ったこともまったくなかったが、同氏が選挙で勝った場合にはアドバイスするつもりではいた。

実際、多くのアジア諸国の政府高官からそういう選択肢を持っておくように言われた。アジア圏での同盟や貿易、米国の利害についてトランプ氏にちゃんと説明できる人間が必要だと考えていたからだ。

しかし数カ月間、海外を渡り歩いて、トランプ氏がどれだけアジアにおける米国の信用を損なったかを認識させられた。そうした中、(前国務省法律顧問の)ジョン・ベリンガーら(50人)が連名で、トランプ氏は危険で無謀で、変わりはしないだろうとする公開書簡を発表した。そこに名を連ねているのは、筋金入りのネオコンたちではない。彼らはイラク侵攻の立役者ではなく、むしろ机上の空論は持ち出さない安全保障のプロたちだ。これに続いて(自分を含む)アジア専門家たちも同様の公開書簡を発表した。国務長官経験者の何人かも、同じように声を上げてくれることを期待している。

トランプ独裁体制はあり得ない

――トランプ氏の問題は、同氏の政策案自体によるものか、それとも根本的な人格的欠陥によるものでしょうか。

これまでの大統領も、筋の悪い政策案を出したことはあるが、それでも彼らはその後世界情勢を勉強し、諸外国との調整に尽力した。対照的にトランプ氏は、無頓着な自己愛にあふれているうえ、非常に無知だ。彼が毎朝、起床して何をするかというと、秘書に自分の名前をグーグルで検索させて、およそ数十ページにも及ぶその結果を読むことだ。それから、おもむろにツイートし始める。彼のアドバイザーたちが「さまざまな問題について勉強すべき」と言ってきているにもかかわらず、その努力をしようとしていないことは明白だ。彼のアドバイザーたちは、何の情報提供も助言もしていないに等しい。

いいニュースがあるとすれば、議会対大統領という分離主義は非常にもどかしい状態を生み出してはいるが、この状態によってトランプ氏が独裁者になることを防ぐことはできる。ただし、彼が大統領になった場合、彼の発言や緊急時の対応は大変危ないものになることが予想される。

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