中国の金融自由化は、どこまで進んだのか 不良債権処理と金融システムの安定化が優先

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次に、人民元為替レートの形成メカニズムについて簡単に振り返ってみよう。2005年7月の為替制度変更により、人民元は「市場の需給に基づき通貨バスケットを参考にする管理フロート制に移行」した。日々の取引レートのレンジは、人民銀行が発表する中間値に対し、対米ドルでプラスマイナス0.3%となった(現在はプラスマイナス2.0%まで拡大)。

ただし、その後の10年間の動きを見ると、時期を区切って人民元高、人民元安、人民元の安定といったトレンドは見られるものの、短期間の変動は基本的に小さかった。

この背景には、中間値がかなり恣意的に決められていたことがある。前日の終値がレンジの限界にあっても、当日の中間値は再び前日の中間値に近い水準に戻されるといったことである。このため人民元レート自由化のためには、レンジ拡大だけでなく、中間値に市場需給を反映させることが必要だと指摘されていた。

為替レートの変動に政府当局は慎重

2015年8月11日の相場改革はこれに応えたものである。中間値は、マーケットメイカーが、前日の終値を参考に、外貨需給の状況と国際主要通貨の為替レートを総合的に考慮し外為取引センターに提供することになった。12月には、13通貨から成るCFETS(中国外為取引センター)人民元指数が発表された。人民元レート形成について対米ドルではなく対通貨バスケットでの人民元レートを重視していることを市場に意識させる意図があろう。2016年には上記の中間値の計算についてさらに具体的な方法が示されている。

2015年8月以降の対ドル人民元レートの動きは、人民元高・安の両方向に動くようになっており、変動幅も大きくなっているものの、一方向へゆるやかに動くというこれまでの傾向から脱しているかを判断するにはなお時間を要する。昨年8月の相場改革の際には、為替市場が動揺した。市場参加者が為替変動に慣れていない中で、当局は為替の大きな変動に対して慎重になっている可能性もある。しかし、為替の調整が一方向でゆるやかな場合、さらなる為替投機をもたらすリスクにも注意が必要だ。

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