竹中平蔵、アベノミクスを語る 竹中平蔵・慶応義塾教授に聞く

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──成長戦略については、民間委員の意見が分かれているとの指摘が出ています。

民間委員だけでなく、霞が関や政治家の中にもどうしたらいいか、異なった意見がある。成長戦略の議論には、企業により多くの自由を与える構造改革の議論と、政府が民間部門にできるだけ多くのカネをつける産業政策の議論の二つがある。両者とも必要だが、あくまで前者にウエートがあって初めて後者も生きる。

竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
慶応義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長
1951年生まれ。一橋大学卒業後、日本開発銀行、大蔵省主任研究官、ハーバード大学客員准教授などを経て現職。2001~2006年、小泉内閣において 経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。ワールド・エコノミック・フォーラムのファウンデーション理事会メンバー。アカデミーヒルズ理事長、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、(株)パソナ取締役会長、(財)森記念財団都市戦略研究所長などを兼務。経済学博士。

──構造改革は何が焦点ですか?

たとえば、10年前にツイッターのようなものが出てくることを予測した人がいますか? どこに、どんな技術があるかわからないから、全面的な規制改革が必要になる。いろんな人に、いろんなチャレンジができるような仕組みを作っておく必要がある。それがあるからイノベーションが生まれる。

──規制改革では、労働市場改革にどこまで踏み込むかも注目されています。

国が抱えており、民間にやらせていない部分を解き放つことがすごく重要だ。たとえば、(一時休業などをした企業に賃金の一部を支給する)雇用調整助成金。本来なら、職業訓練を受けて、新しい職場に移って、経済成長していく分野にリソースを振り向けていくべきなのに、政府が補助金を出して抱え込んでいる。解雇規制も変えるべきだ。解雇規制を変えるというと、労働者をどんどんクビにしていいのか、という極端な議論をする人があるが、これは趣旨を歪めている。

──日本の財政再建は針の穴に糸を通すような難しさがあります。

奇策はない。ただ、一つだけ希望があるとすれば、デフレを早く克服し、名目成長率が3~4%に達すれば、税収はものすごい勢いで増えていく。景気の回復局面では、名目GDPが1%増えると、税収は3~4%増える。それがうまく続けば、財政再建につながる可能性はないわけではない。

01年に私が「骨太の方針」(毎年6月ごろにまとめる経済財政政策の基本方針)を作ったときに何を考えたかというと、当時の財政赤字がGDP比で5.5%だった。それを10年かけて解消するなら、GDP比の負荷は毎年0.5%で済む。ところが、今回はその倍の1%の負荷を毎年かけないと20年度までに赤字はゼロにならない。私がもし今後の財政再建計画を作るなら、20年度までの財政再建目標の達成時期を延長する。

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