航空業界の競争力は人材。そこで予算は惜しまない−−シンガポール航空CEO 周 俊成

わが世の春を謳歌するシンガポール航空。売上高は日本航空(JAL)の半分だが、利益は数倍と収益力は抜群。平均機材年数も約6年5カ月とJALの10年以上に対して最新機材がそろう。顧客満足度調査はつねにトップを走り続け、そのたぐいの受賞は枚挙にいとまがない。全日本空輸(ANA)は「QSタスクフォース」という調査隊を設立、SQ(シンガポール航空)を手本とし、そのSQを文字どおり引っくり返すことでアジアナンバーワンを目指している。その世界屈指の航空会社が、エアバスの総2階建て超大型航空旅客機「A380」を世界に先駆けて就航させ、その最新機材が、日本の成田に5月20日に飛来した。小国・シンガポールで、なぜ最強のエアラインが生まれ成長できたのか。周俊成(チュウ・チュン・セン)最高経営責任者(CEO)が、現地のシンガポール航空本社で週刊東洋経済の独占インタビューに応じた。

--超大型航空旅客機「A380」が日本に初就航する。昨年10月にシドニー、今年3月にロンドンで就航済み。反響はどうですか。

たいへんいい。離・着陸が静かで広い機内に満足しているお客さんが本当に多い。何せ世界に先駆けての第1号ですよ。まったく新しくて大きな機材を飛ばすというのは、30年ぶり以上じゃないでしょうか。それだけ反響も大きくなるわけです。搭乗率も期待以上です。シドニー便は90%に達しており増便もしました。日本への就航も期待が大きいです。

--機材の平均年数は約6年5カ月と業界屈指です。A380も世界に先駆けて導入しました。

新機材導入はポリシーとしてあります。新技術も一緒に入るのでローコストで運航可能になる。A380はB747(ジャンボ)に比べて燃費も2割改善します。エンジニアも保守・点検がしやすい。サービス面でも革新が生まれます。それにお客さんも新しいものが好きですよね。

--大型旅客機は搭乗率が上がればいいが、そうでなければコストが重くリスクは増大する。多頻度小型化の流れに反する気もしますが。

われわれは多種多様な路線を持っています。乗客が多い路線に投入すれば、大型機ほど規模の経済が働き優位性が出る。主要なハブ空港は混雑が常態化しており効果は大きいと判断しました。たとえば、成田空港では発着枠スロットは三つしかない。その枠組みで座席数を増やすにはA380を導入するのが必然です。今後は香港、サンフランシスコ、フランクフルト、ニューヨーク、ロサンゼルスといったハブ空港にもA380の就航を考えています。

--日本の航空会社はボーイング一辺倒。A380については現状では購入していません。

各航空会社によって戦略が違うのは当然。ただ、A380はハブ空港には適しています。われわれもB787はA380並みの20機を注文しました。それほど混雑がないルートに使用します。ルートに合わせた機材戦略が肝心ですね。

--業界全体が原油高などで苦しむ中、シンガポール航空の業績は右肩上がり。サービス評価も高いレベルを維持しています。なぜ他社は追随できないのでしょうか。

高い評価を受けるというのは、別に何かシークレットがあるわけでも何でもない。ただ、航空ビジネスはやはり核となるものに焦点を当てることに尽きますね。それが人材です。お客様は予約から始まって、チェックイン、そして搭乗し、機内を体験し、最後に荷物を引き取る過程すべてが人のビジネス。だからこそリクルートでは、サービスの心があって、気持ちよくおもてなしができ、そうしたコミットができる人を採用しています。それでもまだ完璧でなく向上の余地がある。トレーニング予算をいっさいカットしないのもそのためです。あともう一つ、安全関連も予算は下げない。これが航空ビジネスの土台です。そうしたものに投資を惜しんではいけない。

おカネで買えないものがヒューマンリソース。サービスの文化、企業の姿勢です。われわれは一貫してこういうものを求めてきました。この結果、今、リーディングポジションに立った。だが、それで満足はしていない。刻々と後ろが近づいているので磨きをかけないといけません。

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