卓球男子が超速で「世界最強」に近づいた理由 悲願の「中国超え」も夢ではない

拡大
縮小

たとえば今大会、リザーブ選手として帯同した大島祐哉選手を始め、松平健太選手や森園政崇選手、村松雄斗選手など、多くの若手が「ITTF世界卓球ランキング」でトップ50位以内にランクインするほどの実力を持っている。

若手が育っている背景には、質の高い練習環境が整ってきていることがある。たとえば、代表選手たちがトレーニングを行っている味の素ナショナルトレーニングセンターには、日本、中国、欧州各国のメーカーの卓球台が完備されており、選手たちはつねに試合と同じ環境下でプレーできる。世界で活躍することを前提とした練習環境は、若手選手のやる気を大いに刺激しているはずだ。

若手のレベルアップにおいては、日本の絶対的エースとして活躍してきた水谷の存在も大きい。全日本選手権で8度の優勝、ITTFワールドツアーで結果を出し続けてきた水谷という圧倒的な「目標」や「モデル」ができたことで、若手選手がより一層モチベートされているのは間違いない。

今の若手は海外経験も豊富

海外で「武者修行」を積む若手選手が増えていることも理由の一つだろう。たとえば、今回団体戦に出場した水谷、丹羽、吉村の3選手は、それぞれ若くしてドイツへ足を運んでいる。団体準決勝で対戦した、ティモ・ボル選手や、ロンドン大会の銅メダリストのドミトリ・オフチャロフ選手などとともにトレーニングを行うなど、世界トップレベルの選手たちと切磋琢磨した。

若手が海外を目指すうえで大きいのは、プロリーグの存在だ。ドイツには、卓球のプロリーグであるブンデスリーガがある。卓球で生計を立てることができる夢のような環境がある反面、競争も激しく、1部リーグで活躍し続けるためには、大変な努力が必要だ。そして、このプロリーグで日々勝敗にこだわって揉まれる経験は、プロリーグがない日本では決してできない。

早くから世界トップレベルの選手たちとのトレーニングや試合を経験することで、技術はもちろん、世界で活躍するための意識を高め、メンタルを鍛えることが可能になる。結果として、海外で通用する選手が育ちやすくなるわけだ。

次ページなぜ中国に勝てるようになったのか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT