過度な育休や時短は、キャリアアップの妨げに ガラパゴス化している、日本の女性活用【第1回】

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海外企業が両立支援に取り組む目的は「従業員が家庭責任を果たしながらも、仕事上の成果が出せるように、障害となるものを取り除くこと」。そして、企業と従業員のWin-Win関係を達成するには双方に責任が生じる。単に「従業員が子育てをしながら仕事を続けやすくするため」ではないのである。この認識のギャップが日本のワークライフバランスのガラパゴス化が進む要因の一つだろう。

ここでは女性活用が進んでいる米国及び主要なアジア諸国を比較する。企業のアジア進出が加速化する中、多くの人にとってアジア人は競合相手にも同僚にもなる可能性が高く、アジアの現状を知ることは重要だ。

         出産休暇  育休  時短
日本        14週間   ○    ○
米国        12週間   △    △
香港        10週間   X    X
シンガポール    16週間   X    X
台湾        8週間    △    X
中国        98日間   X    X

○:あり、△:限定的、×:なし。(注)筆者調査、作成

米国では政府が無休の産前産後12週間の休暇を提供するのみで、育児休業は個々の企業に任せられ、一般的に産後3~6カ月前後で職場復帰する。企業はさまざまな柔軟な勤務形態を調えているが、従業員が時短勤務を利用できるのは、あくまでも仕事に支障がない場合にのみ許可され、「全社員に平等」には提供されない。制度は権利ではないからだ。

また、主なアジア諸国では一般的に育児休業と時短勤務がないため、8~16週間の出産休暇後、フルタイムで復帰する。米国やアジアでは終身雇用がないので、家庭責任があっても、企業は給与に見合ったパフォーマンスを期待し、働く側も雇用やキャリアロスを心配して、保障される出産休暇直後に復帰するのだ。

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