若手とシニアがタッグを組めば、社会が変わる 「逃げ切った世代」と「逃げ切れない世代」

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日本の新しいロールモデルとなる「新世代リーダー」。その一人が、「新世代リーダー 50人」 でも取り上げた、小沼大地さんです。小沼さんは、マッキンゼーを経て、NPO法人クロスフィールズを創設。アジア新興国のNPOへ日本の大企業の社員を送り込む、「留職」プログラムを手掛けています。この連載コラムでは、新世代リーダーの小沼さんに、「留職」とニッポンについて熱く語ってもらいます。
友人たちと主催する勉強会に集まる若手社会人の仲間たち。「今の若者は元気がない」と言われるが、果たして本当だろうか?

ここ数年、「世代」という観点で物事をとらえる風潮が強まっているように思う。日経新聞でも「シニアが拓く」というタイトルのシニア世代の動向に着目した特集が続いているし、各種メディアでも、「団塊世代」「ゆとり世代」「C世代」などの特定の世代の価値観に焦点が当てられた報道が増えている。

世代論というのは、個々人の特性を無視した乱暴な議論だとも言える。だがその一方で、そうして物事を単純化して考えることで、時として何か新しいことに気づいたりするものではないだろうか。

世代「論」というほどのものではないが、僕も事業活動をしている中で、日本における各世代を3つに分けて考えてみることがある。非常に乱暴なことと百も承知だが、「逃げ切った世代、逃げ切ろうとする世代、逃げ切れない世代」という考え方だ。

60~70代は「逃げ切った世代」、20~30代は「逃げ切れない世代」

現在60~70代のいわゆるシニア世代の方々は、「逃げ切った世代」だと僕はとらえている。この世代は、バリバリと働いて日本の高度経済成長を支え、バブルの絶頂も経験し、そして華麗に引退していった方々だ。これから日本社会が直面することになるであろう経済の停滞や社会保障制度の崩壊などといった課題には、直接的に対峙せずに済むという意味で、「逃げ切った世代」というわけだ。

それに対して40~50代の方々は、「逃げ切ろうとする世代」と表現できるのではないかと思う。当然ながら、この世代は現在の日本社会の屋台骨となって活躍されている方々だ。しかし、さまざまな問題が噴出している現在の日本社会においても、今敷かれているレールの上を全力で走っていれば何とかなると考えている人たちが多い世代でもあるように思う。失礼な言い方をあえて選んでしまうと、目前に迫った絶望的な社会情勢から「逃げきろうと必死になっている世代」だととらえることができるかもしれない。

実際、企業の中でみても、この世代の人たちには、「逃げ切った世代」がつくってきた既存の枠組みを、それが今の時代に合っているかを無視して、とにかく守り抜こうとしている人たちが多いように思える(繰り返しですが、あくまで乱暴な紋切り型の世代論なので、この世代の方々の全員を指しているわけでは決してありません)。

そして最後に、今30歳の自分を含む20~30代の若者世代は、「逃げ切れない世代」だ。この世代は、いわゆるバブルというものを経験したことのない世代である。自分自身のことを振り返ってみても、幼い頃から「バブル」という言葉には必ず「崩壊」という言葉が一緒になって耳にしていたし、学生時代にはライブドアショック、そして社会人になると同時にリーマンショックを経験している。経済的な意味で成功を収めることについて、リアリティを持たずに人生を送ってきたように思う。

そのため、今の20~30代は、既存のレールの上を進んでいても、その先に上の世代が歩んできたときのような道は続いていないことを本能的に悟っている。同世代の友人たちを見ていると、自分たちのことを「逃げ切れない世代」であるとハッキリと自覚している人間が本当に多いと感じる。

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