京都ホテル、強豪リッツ進出に戦々恐々 ライバルへの宿泊客も誘うしたたか戦略とは

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レストランや喫茶へリッツ宿泊客の回遊も意識

リッツ・カールトンの京都進出も、こうした国内外からの観光需要の広がりを意識したものだろう。円高修正は外国人客の日本旅行需要を押し上げる期待もある。

京都ホテルの客層のすべてがリッツと重なるわけではないが、ラグジュアリーホテルを好む富裕層顧客への一定のダメージは避けられない。だから、14年春の進出に向けた対抗策にはがぜん力が入る。高層客室階「エグゼクティブフロア」の大幅改修を実施(13年4月リニューアルオープン)するほか、リッツ以外にも大型婚礼施設の進出が予定されているため、敷地内でチャペルの新設に着手する。

ライバルを迎え撃つ一方で、リッツ宿泊客を含めた近隣客の回遊にも知恵を絞る。史跡・一之舩入に面するレストラン「ラ・テラス了以」をリニューアルし、観光がてらの飲食需要をしたたかに取り込む。了以の隣には12年末にカフェ「ル・プティ・スエトミ」もオープンしている。125周年イベントや、大河「八重の桜」にちなんだ宿泊プランも充実させ、顧客の利用増を促していく。

同社は京都ホテルオークラ(京都市中京区)に加え、同市下京区の「からすま京都ホテル」の2拠点体制。ほかに京都市東山区で和風料理旅館の「粟田山荘」を経営する。

01年に業務提携したホテルオークラから、05年に資本参加を受けた。また、資本参加で経営支援を受けるニチレイとは、食品や不動産などで業務面でもつながりを持つ。オークラのブランド効果で外国人客への認知が徐々に高まっており、収益力の改善で総資産の76.9%を占める有利子負債の削減につなげたいところだ。

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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