利益率22%!東横インは"非常識の塊"だった 創業家社長が語る「脱・値上げ」の行方

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競合のビジネスホテルには1泊3万円超という破格の値段を付けるところがあるのに、東横インはなぜ低価格や一律料金にこだわるのか。

その理由を同社の黒田麻衣子社長は「東横インは『第2の家庭』や『生活必需品』と考えています。牛乳や卵の値段がいきなり倍になったら困りますよね。500円の値上げでも、お客様の期待を裏切ることになってしまいますから」と話す。

実は東横インの場合、女性の支配人が9割以上を占めている。女性を活用しているのも、「家庭のようなホテル」を理想型としているためだ。採用方法についても、フロントから順次キャリアアップするのではなく、いきなり支配人として採用を行っている。女性でやる気と適性さえあれば、業界未経験でも、専業主婦でも、支配人として採用するという。

「駅前旅館の鉄筋版」が目指すもの

駅近くにある利便性が特徴の東横イン。最近は鉄道が間近に見られる部屋を「トレインビューホテル」としてアピールしている

「ホテルは家庭と同じように小さな世界です。家庭を気持ちよく整えるように、スタッフが働きやすい職場をつくるのが支配人の仕事。リピーターを増やすのも、水滴を1滴ずつためるような努力です。男性は飽きてしまうかもしれない。でも女性はそうした小さな努力を日々、積み重ねることに喜びを見いだします。だからこそ、東横インの支配人は女性なんです」(黒田社長)。

同社の業績は絶好調だ。前2016年3月期は売上高801億円(前期8.2%増)、経常利益は177億円(同11.1%増)と過去最高を記録。経常利益率はなんと22%に達した。

シングル料金が1泊約6000円(全国平均)という低価格ながら、高収益をあげられる理由は2つある。ひとつは高級ホテルのようなレストランや宴会場を持たず、採算の良い宿泊に特化することで、コストを削減していること。

もうひとつは自社で土地を持たないという経営スタイルだ。現地の不動産オーナーにホテルを建ててもらい、ホテルごと賃借する運営方式を取っている。賃料を定額払いにすることで、東横インにとっては資金調達や巨額の借入金を負わずに済むといったメリットがある。

こうしたホテルづくりは、電気設備工事業界から参入した創業者の西田憲正氏の手腕によるところが大きい。1986年、友人の土地の有効活用として蒲田でホテルの運営を始めたのが、そもそものきっかけだ。

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