月収16万円、「介護」へ転身した42歳の誤算 正社員だが残業代も休日手当もナシ

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3年前に介護の世界に入ったテツヤさん(42歳、仮名)(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしていく。

 

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3年目、テツヤさん(42歳、仮名)は「ど素人」として介護の世界に飛び込んだ。今、彼の名刺にはすでに「管理者」「生活相談員」といった肩書が並ぶ。上司や先輩たちがうつ病になったり、仕事になじめなかったりして次々と辞めていく中、気がつくと、北海道内のある高齢者施設の責任者になっていたという。

介護保険関係の計算や収支の管理、スタッフのシフト調整といったデスクワークはもちろん、小さな施設なので、利用者のクルマでの送迎、食事や排せつの介助といった介護業務もこなす。夜間の呼び出しに備えて自宅などで待機する「オンコール」は、原則、管理者の担当なので、体調を崩した夜勤スタッフから呼び出されて急きょシフトを代わることもあるし、夜勤明けからそのまま日勤に入ることもある。

残業代も、休日手当も付いたことがない

正社員である。が、毎月の手取り額は約16万円。残業代も、休日手当も付いたためしがないというから、実際の労働時間を時給に換算したら、ひょっとすると北海道の最低賃金764円を下回っているかもしれない。

介護業界の待遇の悪さや離職率の高さは耳にしていたが、介護福祉士でも、ケアマネジャーでもないテツヤさんにいきなり施設管理を任せる無茶振りに、こう言って苦笑する。

「事務仕事は引き継ぎらしい引き継ぎもなくて、ネットで調べたり、市役所に電話したりして死に物狂いで勉強しました。覚悟はしていましが、給料の安さはやっぱり異常です」

テツヤさんが働いているのは、住宅街にある一戸建てを利用したデイサービス施設だが、同時に入居を希望する高齢者も受け入れる、いわゆる「無届け老人ホーム」も兼ねている。

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