クックパッド、止まらない「幹部流出」の危機 競合メディアの出現で成長性に陰りも

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また、野菜など生鮮品の宅配を手掛ける「産地直送便」事業では、取引先の農家などに対して一方的に事業の撤退と取引中止を通告したことでトラブルになっている。こうした中、責任をもって業務を行える状況ではないとして、自ら降格を申し出た管理職も出ているようだ。穐田氏は、岩田氏、佐野氏とともに執行役の一人だが、国内グループ会社事業だけを担当として割り振られており、蚊帳の外に置かれたままだ。

それでも、足元の業績は好調だ。クックパッドの今2016年12月期第1四半期決算(1~3月)は売上高が前年同期比52.2%増の43.8億円、営業利益は同73.2%増の20.7億円だった。クックパッドは180万人超の有料会員事業とサイトの広告収入が収益の2本柱で、想定外のユーザー離れが起きない限り、業績が急激に崩れることは考えにくい。8月9日に発表される第2四半期決算(4~6月)も経営混乱の影響は少ないとみられる。

ただ、問題は今後だ。社員はこう吐露する。「今は、事業が伸びていたときの貯金を使って生活しているのと同じ。ここまで人材流出が進んでしまうと、遅くとも今冬には業績影響が出始めるのは間違いない。残った社員も非常に士気が下がっている。かつてのクックパッドは成長を続けられるよい会社だったが、もう、今はなくなってしまった」。

レシピ動画のライバルが続々と出現

人材流出を抜きにしても、他を寄せ付けない強さに見えたクックパッドのサービスは、先行きが盤石とは言えなくなりつつある。レシピ紹介サービスでは、スマートフォンでの視聴やフェイスブックなどSNSでの拡散に最適化した動画メディアが急速に勢いを増しつつあり、クックパッドが将来も影響力を保ち続けられるかは未知数だ。

現在、米バズフィードの「テイスティ」やベンチャー企業であるエブリーの「デリッシュ・キッチン」、デリーの「クラシルフード」などがしのぎを削っており、クックパッドにとっても、特に若い世代のユーザー獲得で競合となっている。

人材流出と新たな競合の出現に耐えられるのか。クックパッドが今後歩む道は、崖っ縁の険しさになると言っても過言ではない。
 

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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