QE3はいつまで続くのか 米国で再び膨らみ始めた信用バブル(Fedウォッチャー)

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米国金融部門のダイナミクスを感じさせる動きだが、同時に、こうしたダイナミクスが、すでに新たなバブルを生んでいるとの懸念も高まり始めている。QE3の第2の評価軸に照らし合わせれば、QE3の継続にとって大きなブレーキとなり得る材料だ。

カンザスシティ連銀のジョージ総裁は、先月のFOMCに、2011年の就任から初めて投票権を持って参加した。長年にわたる銀行監督の経験を持つ彼女は、このFOMCで、金融不安定化への懸念を理由に反対票を投じた。FOMC前に行った講演では「債券、農地、レバレッジド・ローンなどの資産価格が歴史的にみて高水準にある」と指摘し、「資産価格の急激な調整が起きれば、雇用を不安定化させる」と述べている。

実際、カンザスシティ連銀の管轄地域では、農地価格が2年続けて20%以上上昇している。ジョージ総裁は「金融の安定化は、雇用と安定的な経済成長という長期目標を達成する上で欠かせない要素であり、中央銀行が最も重大な関心を持って臨むべき課題だ」と言う。

報道によれば、ジョージ総裁はこの講演後の質疑応答で「債券バブルの兆候はあるのか」と問われ、「それは分からないが、状況を注視する必要があるのはそのためだ」と答えたという。しかしジョージ総裁の懸念が杞憂ではないことを、スタインFRB理事が明らかにした。

QE3のブレーキとなりかねない新たなバブル

スタイン理事は、2月7日の講演において、企業向け信用市場が過熱している可能性があると警告を発した。

スタイン理事は、ジャンク債、レバレッジド・ローン、PIK債(現金での利払いに替えて新たに発行する債券を充当できる債券)、コブライト・ローン(貸し出し条件が甘い融資)、ディビデンド・リキャップ(配当のための負債調達)などの新規組成が2012年に加速したことを取り上げた。これらの中にはバブル崩壊前の2007年頃の水準を超えるものすらあり、「かなりはっきりと、企業向け信用市場では“利益追求”(reach-for-yield)の動きがみられる」と指摘した。低金利の下、ハイリスクな金融商品への投資が増えている、という意味である。

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