米国の長期金利上昇、「春の嵐」再燃も 1月のFOMCは景気判断を前進させる(Fedウォッチャー)

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1月16日にFRB(米国連邦準備制度理事会)が公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、昨年11月中旬から今年1月4日までの経済活動のペースについて、12地区全てで「穏やか、もしくは緩やか」(modest or moderate)だったことが報告された。前回の報告では「ゆっくりとしたペース」(at a measured pace)だったことと比較すると、米国の景気は昨年末にかけて改善ペースをやや高めた様子がうかがえる。

今月発表された昨年12月の経済指標からも、持ち直しが確認できる。需要面では小売売上高が前月比0.5%、供給面では鉱工業生産指数が同0.3%と共に堅調な増加・上昇を示した。住宅着工も高水準だ。さらに最近の経済指標は、市場参加者による事前予想を上回るようにもなっている。

これらの材料は、我々にひとまず安心感を与えてくれる。というのも、昨年12月に経済活動のペースが上がらなければ、2012年10~12月期の米国経済はゼロ成長のリスクがあったからだ。

米国の著名な民間予測機関の1つであるマクロエコノミック・アドバイザーズによれば、昨年11月の月次実質GDPは7~9月期の平均値と比べて年率マイナス0.2%の伸びに留まった。12月に前月比0.2%という緩やかな伸びで持ち直してようやく、10~12月期の成長率がプラスになる計算だ。

量的緩和策を巡る意見対立

景気回復期待と共に、金融政策の出口戦略に対する関心が高まっている。年前半に回復期待が盛り上がるのは、もはや風物詩だが、2012年には3月FOMC声明文における景気判断の前進というニュースが米債市場を襲い、長期金利が上昇した。

今年も、1月3日に公表された昨年12月FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が金融市場参加者にサプライズを与えた。量的緩和策の継続期間を巡るFOMCメンバー間の意見対立が明らかになり、特に「2013年末よりもかなり前に、購入ペースを減速するか、購入をやめるべき」というメンバーが複数(several members)いたことで、量的緩和策の早期終了の思惑から、長期金利の上昇要因になった。

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