いま、安倍首相に懸念される五つのこと 塩田潮の政治Live!

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高支持率と株高・円安の実現で好スタートを切った安倍首相だが、まだ政権発足から50日余で、国民が「お手並み拝見」と成り行きを見守る「新任首相と世論のハネムーン 100日」の期間中である。
この先、通常国会、今月20日からの訪米、3月の日銀総裁人事などが待ち構えるが、政権の行方を占うポイントは5つある。アベノミクスの成否、与党の支えと政権基盤、国民の支持の動向、7月の参院選、もう一つは首相の健康状態だ。

アベノミクスは経済再生の特効薬となる可能性もあるが、一つは、狙いどおりにいくかどうか。さらに劇薬の副作用への対策も問われる。他方、実行する政権の陣容も気になる。菅官房長官ら「お仲間閣僚」は上げ潮派と見られるが、麻生財務相の「アソーノミクス」との路線対立も懸念材料だ。安倍首相は二股膏薬作戦だが、今後、指導力が試される。

総裁選での逆転勝利を見てもわかるように、安倍首相の政権基盤は強固ではないが、与党の支えでは、総裁選を争った石破幹事長との「安・石戦争」、憲法や安全保障をめぐる公明党との亀裂を予想する声もある。一方、国民の支持は「 100日」後の変化が焦点だ。第1次内閣での支持率急落という失敗を踏まえ、二の舞いとならないように慎重運転を心がけるはずだが、何が飛び出すかわからないのが政治の世界である。

参院選は、1月25日のこの欄で触れたように、「非改選組と合わせて自公で過半数」は、簡単な話ではない。

一番の気がかりは首相の体調、と見る国民は多い。難病の持病を抱えて、国家と国民のために身を削って奮闘しようとする姿勢には敬意を表したいが、07年9月の辞任のときのように、「首相としての職責」「正常な判断」「国会への対応」が困難になる危険性があるリーダーは、元来、首相には不適任では、という見方も根強い。

以上の5点について、安倍首相はこれから自らの行動で答えを示すことになる。いまは好天の「ハネムーン」を謳歌中だが、いつ土砂降りの雨が襲うか。一寸先は闇である。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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