ポケモンGO利用規約、日本でどこまで有効か 法律は"消費者"であるユーザーを守っている

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もし、利用者と何らかの紛争が起きて日本の裁判所に訴えられた場合、ナイアンティック社は、規約に基づく管轄の合意がある(民事訴訟法第3条の7第1項)と主張し、訴え却下を求めるだろう。しかし、民事訴訟法第3条の7第5項には、消費者契約に関する合意の効力について特別の規定が存在する。

「これによると、消費者である原告が契約締結時にその外国に住所があったような場合、つまり今回のケースではカリフォルニア州に居住していたような場合には、規約通りの管轄が認められる余地がある。しかし、そうでなければ、消費者の側があえてカリフォルニアで裁判をしたいと主張しない限り、管轄の合意についての効力を有しないとされている」(最所弁護士)

では、ナイアンティック社が、紛争解決については「仲裁合意」がされているため、裁判はできないとの主張を行った場合はどうなるのだろうか。

「仲裁法附則第3条2項では、『消費者は、消費者仲裁合意を解除することができる』とされている。消費者は合意を解除すると主張しさえすれば、ナイアンティック社の仲裁合意の主張は認められない」(同)

さらに、規約では、「抵触法を考慮することなく、カリフォルニア州法に準拠する」とされていた。これをもとに、ナイアンティック社が、「準拠法」は、規約で定められたカリフォルニア州法であり、日本の法律は適用されないと主張した場合はどうか。

「法の適用に関する通則法第7条には、当事者が準拠法を選択することができる旨の規定があるが、ここでも第11条に消費者契約の特例が設けられている。仮に利用規約に同意していたとしても、日本の消費者が日本法における特定の強行規定を適用すべきという意思をナイアンティック社に表示すれば、日本法の強行規定が適用され、その意味で『抵触法を考慮することなく』の部分は否定されることになる」(同)

日本では消費者を有利にする仕組みが作られている

ゲームの設定画面から利用規約を読むことができる

このように、日本では様々な法律によって、事業者に有利な契約を修正し、消費者を保護する仕組みが作られていることが分かる。アメリカでは、賠償額が膨大になる可能性を引き起こす、クラス・アクションや懲罰的損害賠償をできる限り避ける必要があるため、事業者に一方的に有利な規定が盛り込まれているわけだが、ナイアンティック社が日本向けに発表された「ポケモンGO」の規約も内容は本国のものと同じだ。日本にローカライズされて作られているわけではないため、日本国内においては効果が認められない条項も多数存在する。

ただ、最所弁護士は「訴訟を提起すれば、外国法人に対して送達を要するが、その際、英訳が必要となるほか、非常に時間と手間がかかる。また、強制執行の場面でも、困難が予想される。その意味でも、国内企業に対する訴訟の場合とは、相当異なる労力が必要だろう」とも指摘する。実際に国内で裁判ができることと、外国でも効力が認められ、救済を容易に受けられるかどうかは、また別の話ということだ。

その他にも、免責事項やプライバシーポリシー、子どもによる利用への対処など、規約をめぐる論点はまだまだ存在する。「ポケモンGO」をきっかけに、普段よく使うアプリについても、規約の内容を一度確認してみると新たな発見があるだろう。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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