遠藤功「北の革命児・コープさっぽろ」 ニッポン中堅企業の秘めたる爆発力

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2012年11月27日、暴風雪が北海道を襲った。雪に慣れているはずの北海道だが、大規模停電が発生し、貨物輸送にも大幅な遅れが出て、道民の生活は混乱した。

多くのスーパーやコンビニが閉店を余儀なくされる中で、コープさっぽろは電気が復旧していない真っ暗な店舗の前に移動販売車を置き、弁当などを販売。庶民の生活を支えた。

スーパーマーケットから「食のインフラ」ビジネスへ進化

この移動販売車は過疎が進行する北海道の「買い物弱者」を支援するために、コープさっぽろが1997年に開始した。生鮮品や総菜、雑貨など1000品目を揃え、92の市町村を巡回している。「おまかせ便カケル」という愛称は、小学生の作品が公募で選ばれた。過疎の村のお年寄りからは「直接見て、手にとって買えるのがうれしい」と好評だ。現在、約50台が稼働しているが、2014年末までに2倍以上の100台へ増やす予定だ。

過疎化、高齢化が進む北海道では、店舗を構えてじっと待っていても、売り上げは伸びない。でも、需要は必ずある。ならば、こちらから顧客に近づき、販売に出向く。「買い物弱者」を救うとともに、それが自らの成長を創り出すことにつながる。

同様のコンセプトで、コープさっぽろのこれまでの成長を支えてきたのが、独自の宅配システム「トドック」だ。もともと生協では協同購入による宅配が行われていたが、各家庭に直接配達される「個配」の要望が多く、2006年に「個配」を開始。今では、総事業高の3割を占める中核事業へと成長した。2012年3月期も6%以上の伸びを示している。

また、2010年には日々の夕食を届ける配食事業を開始した。既に、利用登録者は1万人を超えている。札幌や帯広、函館、苫小牧など主要エリアで展開し、1日平均1500食の弁当を製造できる直営工場を各エリアに持っている。

コープさっぽろは従来型の店舗小売業から脱皮し、宅配、移動販売、配食など様々な販売システムを複合的に持つ「食のインフラ」へと着実に進化を遂げている。

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