マツダが「アクセラ」に込めた逆境打破の誓い 新技術は3割減に苦悩する国内販売を救うか

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新技術は他の車種にも横展開で導入していく

今回アクセラに投入した新技術は、マツダ全体にとっても大きな意味を持つ。他の車種にもフルモデルチェンジを待たず、商品改良で投入していくからだ。こうしたことが柔軟にできるのは、マツダが5~10年単位で全ての車種を一括で企画するように構造改革を行ったからだ。

車種間で構造や部品設計に共通性を持たせる「コモンアーキテクチャー」構想を取り入れているため、開発した新技術をタイムリーに商品に反映できる。この手法だと設計開発や生産の効率が上がり、削減できたコストは新技術の開発に回すという好循環が生まれる。商品価値が向上すれば実売価格を引き上げられ、台当たり収益も改善できる。

国内のディーゼル市場を開拓

ただ、そうした好循環も商品の車が売れてこそ実現できる。マツダは今回の改良に合わせ、従来2.2リッターしか設定がなかったディーゼルエンジンに、価格が手ごろな1.5リッターを追加した。ディーゼルの経済性や環境性能に加えて、低速域でも力強い走りができるエンジン特性を改めて顧客に訴求して、販売のテコ入れを図る考えだ。

国内のクリーンディーゼル市場はマツダが開拓してきたといっても過言ではない。マツダがディーゼル市場に参入する直前の2011年の国内販売台数は約9000台にしかすぎなかったが、2015年には15万台を超える規模にまで拡大した。このうちのおよそ3分の2をマツダの5車種が占める。この5年間で欧州車の参入も増え、今では11ブランド47車種がひしめき合う激戦市場だが、自動車市場全体に占めるシェアはまだ3%。「拡大余地は大きい」(福原常務)と見る。

2017年3月期は為替想定を円高に見直し、マツダの世界販売台数は1%増と伸び悩む一方、スカイアクティブの第2世代の技術開発に費用がかさむことから、営業利益は前期比25%減の1700億円と、5期振りに減益となる見通しだ。厳しい経営環境下で顧客をどう取り込み収益を上げるか、マツダの今後の経営戦略を占う上でも、アクセラの商品改良の成否に注目が集まる。

(撮影:尾形文繁)

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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