ポケGO沸騰!「ポケモノミクス」の巨大潜在力 任天堂に加え周辺企業への好影響も大きい

拡大
縮小

料金については多くのスマホゲームと同じく、アプリの入手と基本的なプレーは無料。ゲームの進行に必要なアイテムは、街中を歩けば無料でもらえるが、おカネを支払えばすぐにも手に入る、“時短型”の課金制が採用された。これは欧米ではすでにありふれた手法だ。

なお、日本で「ガチャ」と呼ばれていたランダム要素の強い課金は採用されず、ギャンブル性は低い。

運営する側にとって“おいしい”のは、プレーヤーからだけではなく、地域からも集金できることだ。

アイテムが手に入る「ポケストップ」やモンスターが対戦する「ジム」の場所を設置するのには費用が必要。店舗や旧跡が選ばれることが多いが、そこには多くのプレーヤーが集まり、物販などビジネスにも結び付く。企業からスポンサー料を徴収し、より集客できる特別な場所の提供も可能だ。日本での導入時には、日本マクドナルドホールディングスと提携、全国3000店舗内でのコラボが始まっている。

ただし、ポケモンGOの人気が任天堂の収益に直結するかは、まだわからない。

ポケモンGOを発案したのは、米グーグルの社内ベンチャーだった米ナイアンティック。同社が2012年に投入した位置情報ゲーム『イングレス(Ingress)』が大元になっている。

歩きスマホなど事故やトラブルも

ポケモンGOの画面の一部。いろいろなモンスターを捕まえる
©2016 Niantic, Inc.  ©2016 Pokémon.  ©1995-2016 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc. 

きっかけは2014年4月、グーグルがマップ上にポケモンを配置する、「グーグルマップ・ポケモンチャレンジ」なるイベントを行ったこと。ナイアンティックと任天堂、そしてポケモン関係事業を担当する任天堂の関連会社ポケモンの3社間で、つながりができた。その後、ナイアンティックがポケモン社からキャラクターのライセンス供与を受けたうえで開発した、という経緯がある。

現状、課金アイテムの売上高はアップルのiPhone向けで、1日当たり推定160万ドル超。任天堂にとってはライセンスビジネスの一環で、自社開発のゲームほど収益性は高くない。ポケモンGOの収入のうち任天堂に回るのは数分の1とされる。

懸念もある。海外のプレーヤーは1990年代から2000年代のポケモンブームを経た30代が多い。任天堂の国内の顧客より年齢は高く、米国では事故などトラブルに巻き込まれる例が頻発。日本においても配信前から、若者や子どもの「歩きスマホ」を誘発する、との心配の声が上がっていた。

それでもこの熱狂が、任天堂の築き上げたポケモンという巨大な資産によって立つことに、変わりはない。今後スマホがより低年齢層に普及する中で、キラーコンテンツになるのは必至だ。初代ポケモン発売から今年で20年。すでに親子2世代に通じるキャラクターとなったポケモンのビッグビジネスはどこまで拡大するだろうか。その可能性は極めて大きいと言えるだろう。

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT