医薬品ネット販売、「解禁」の先 ケンコーコム後藤社長に聞く

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ただ、今処方箋のeコマース化が進んでいる諸外国では、1回の処方箋で何回かに分けて薬を買える形になっている。他方、日本は1枚の処方箋で基本1回。するとお医者さんに診てもらって、その病院の目の前にある門前薬局で薬をもらって帰る、という導線ができていて、そこにネットが入る余地はあまりありません。

これが、1回の通院と処方箋で10回分くらい薬がもらえる形になれば変わってきます。毎回病院に行かずとも、たとえば毎月2回ずつネットの薬局から薬が送られてくるような形を実現できる。患者さんもいちいち通院したり、薬局に薬を取りに行ったりする必要がなくなります。医療財政的にも、毎回かかっている診察料を削減できます。現在、規制緩和の流れの中で日本でもそういう話が出始めています。

「なぜ対面販売でないとダメなのか」

――これから一般用医薬品販売のための、新しいルール作りが始まります。

前回省令を作る際に間違っていた点は、はっきりしています。順序としては、「医薬品は副作用リスクがある」ので、「医薬品販売ではリスクを最大限低減しなければならない」。そのためには「対面販売が原則」という流れで決まっていましたが、「なぜ対面販売でないとダメなのか」ということを検証する議論がストンと落ちています。結局裁判でも、対面でなければならない意味はなにかを再三指摘され、厚労省は証明できませんでした。

それでは、本来ルールを作るときに議論すべき内容、順序はどんなものか。「医薬品は副作用リスクがある」、「リスクを最大限低減しなければならない」と、そこまでは問題ありません。で、その次には「そのためには○○が必要」という要件が語られるべきです。

たとえば、販売者の資格、薬局の許認可、薬剤の管理方法。あるいは提供すべき情報、大量購入の防止策というようなものです。そういった要件があって、それを実現するために、対面販売ならこうしましょう、ネット販売ならこうしましょうという方法論が出てきます。

もし上がってきた要件の中に、ネットではどうしても満たせないものがあって、それに応じて販売を禁止するという順序であれば筋が通ります。ところが、前回の議論では「安全に販売するには対面」と、神話のように言われてネットが排除されました。

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